第53話 何で動けたの?

「ダイワール エノアイアー レギーオ!」


 ミナの病気治療の魔法。

 第4位階の法力魔法だ。

 まず自分に掛け、続いておやっさん。

 エンジュ、リン、タマミと掛け。


「ここで病気治療は打ち止めです」


 まあ、ミナは第4位階の魔法は5回しか使えないからな。

 でもま、第4位階なら……


 スッとリンが手を上げて。


 ……リンも5回使えるんだよな。


 ありがてえ……


「じゃあ後は私がやります」


 魔法語詠唱をするリン、

 そしてリンが俺に病気治療の魔法を掛けた。

 ……これで全員病気が治る。


 そして魔法を掛けて貰いながら


「ミナ、何で動けたんだ?」


 訊ねる。

 疑問だったから。


 大したことでは無いかもしれんけど、これくらい訊いてもいいよな。

 すると


「これですわ」


 ちゃら、と自分の首にぶら下がっている、その青い宝石が嵌っているネックレスを持ち上げて示す。

 それは……


「……不眠のネックレス!」


「そうです。あの土壇場でエンジュさんが私に」


 ……あの熱病での眠気の中、そんな判断を下したのか。

 すげえな……エンジュ……!


 パズズが感染させた熱病の症状……それは発熱、倦怠感、そしてしんどさから来る異様な眠気。

 その3種で一番マズい眠気を不眠のネックレスで押さえて、他2つは精神力で抑え込む……。


 その3つ全てを精神力で抑え込めるおやっさんはすごい。

 誰も真似できない。


 けど。


 一番マズいもの以外は、俺らでも短い間なら耐えられる。

 そこまで瞬時に判断し、一番パズズに手痛い一撃を入れられるミナに、不眠のネックレスを掛けたのか……。


 ナイスだ。


「……頭回らんで苦労したけど、上手く行って良かったわ~」


 そう、背負い袋からあの絵を出しながら言う。

 そして


「おふたりさん、お願いがあるんやけど」


「何?」


「何ですか?」


 ミナとリンが

 2人して、この戦いで使用した魔法消耗を回復しようとした。


 そして絵の屋敷に入って休むために。

 2人で手を繋いで念じようと、その目を閉じようとしたら。


 エンジュからのその言葉。


 それにミナとリンが反応した。


「ここで休む前に、回復魔法を掛けていってくれへんか? ……まだ使えるんや。活用せんと」


 エンジュはそう言って、手で示した。

 ……グレーターデーモンを。




「よし、次は地下5階や!」


 休憩に入る前に治せる箇所を全て治した

 病気攻撃だけじゃ無いからな。

 魔法攻撃もたっぷり喰らってる。


 で、1分後。

 すっかり元気になったミナとリンが、絵から現れた。


 ……地下5階か。


 俺とリンが、昔出会った切っ掛けになった、あいつの生息地域だな……。

 もし出会ったら、なるべく消耗がないように倒さないと……!

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