第51話 バケモンにはバケモンをぶつけんだよ

 触られるなってなぁ!?

 ワイトなら良い!

 ほぼ完封できるからな!


 それぐらい実力差がある!


 だけど、これは邪神だ!


 邪神相手に、相手に一切触れられず、勝負を決めろと!?


 無理に決まってんだろォォォッ!?


 それに!


 ワイトが1秒で約1カ月の若さだ!


 そしてこいつはアンデッドの王!


 こいつのエナジードレインが、ワイトと同じはずがない!


 もし、1秒で4カ月の若さを吸うとかだったらどうする!?

 その場合、3秒で1年だぞ!?


 あっという間に寿命が尽きて消滅ロストしてしまうわ!


 エンジュ!

 何か策は無いのか!?


 俺はとっさにそれを考えた。


 他人任せに見えるのが気にはなるが。

 俺としては余裕なかったからな。


 思わず知恵を彼女に求めてしまった。


 ……すると彼女はパズズを指差し


「グレーターデーモン! どっちでもええからパズズの手に抱き付いて封じい!」


 鋭く指示。

 すると


「ショウチ!」


 エンジュの命令で、青い悪魔・グレーターデーモンがパズズに飛び掛かり。

 その左手を身体で全力で封じた。




「ちいいいい! キサマそれでも悪魔か! 人間なんぞに操られおって!」


 突如グレーターデーモンが左手に抱き着いて来たことに対応できず、引き剥がそうと必死になるパズズ。

 グレーターデーモンは、ただパズズの左手を封じるためなら何でも犠牲に出来る勢いで、しがみついている。

 白濁した目に指を入れられても、穴だけの鼻の穴に指を入れられても。


 ……咄嗟の機転だ。

 グレーターデーモンなら、いくらでも犠牲にできるよな。


 こんなもん、年を取ろうがどうなろうがどうでもいい。

 仲間じゃ無いし、人間ですらない。


 捨て駒にしても、全く問題ない。

 だけど……


「なぁエンジュ」


「なんや?」


「これ……何分持つの?」


 当然の心配。

 グレーターデーモンの寿命が尽きたら拘束が解けるわけで……


 俺のその心配からの問いに、彼女は


「……古代王国があったのは何年前やったかな?」


 えっと……


 それ、今関係あんの?

 そう思ったが。


 エンジュは意味の無いことは言わない。


 だから……

 記憶を呼び起こす。


 今とは全く違う世界だった古代王国。

 全世界が1つの国であり、ただ一人の「帝王」が支配していた世界。

 魔法文明も今より進んでいたらしい。


 それが……大体数万年前?


「数万年前だったか? 違ったっけ?」


 うろ覚えの知識でとりあえず答えた。

 すると


「……まあ、だいたい間違っては無いわ。で、や……」


 古代王国時代の魔術師が作った遺跡って、いっぱいあるわな。

 無論、作られたのは数万年前や。


 ……なのに、遺跡の番人にザラに召喚済みの悪魔が配置されてるのはなんでやろな?

 あいつら生殖器無いねんで?


 ……あ。そういうことか。


 思わず、心で手を打ってしまう。


 ……つまりあいつら、寿命の概念が無いのか。

 力で倒すのは簡単に出来るけど、時間で殺すのは無理なのな。


 だったら……ああ、なるほど。

 パズズが引き剥がそうとするわけだ。


 吸い殺すのが出来ないなら、剥がすか普通に殺すしかないものな。


 ……スゲエ。


 俺が感嘆していると。


「ヤーッ!」


 パズズのそんな隙を見逃さず。


 ミナがヴァルキリーソードで真向斬りを繰り出し。

 パズズの自由な右腕を手首と肘の半ばあたりで一刀両断。

 

 切断した。


 グアアアアアッ!


 ……パズズの悲鳴が響き渡った。

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