第50話 風の邪神パズズ
「しっかり休憩させていただきました」
「休んだ休んだ~」
超立派なお屋敷の絵の中から、光と一緒に抜け出て来た2人。
リンとタマミ。
充分寝たのか、2人ともリフレッシュしていた。
……俺はだいぶギリギリだったけど。
結局、だいぶ火酒を呑み過ぎて、途中で目が覚めることが数度あったからな。
おやっさんのさ、話題が重いというか、辛いというか、悩ましいというか……
酒の席でする話題じゃ無いわ。
そんなところでやったら、逃避で思わず飲んでしまうだろ。
「オフロも広くて、しかも石鹸もお湯も、いくら使っても減らないの。最高の環境だよね~」
「2人で入っても十分広かったしね~」
楽しそうに言う2人。
タマミは元々、露出の多い服を好む女であるし。
リンは黒で、感情に素直に従うタイプの人間だしな。
……条件が揃えば、そりゃそういうことも起きやすくなるか。
しかし……風呂、広かったのか。
風呂には入らないで寝たんだよな。
俺たち。
「風呂ええよな。この絵、最高やわ」
エンジュも乗っかる。
ニコニコ顔で絵を撫でながら
「ウチ、この絵があるんやったらもう、スイートルーム引き払って木賃宿に引っ越すわ」
元々、ウチがスイートルームに入っとったの、風呂が木賃宿に無いからやしな。
そう続けた。
……まあ、エンジュのスイートルームは贅沢ではなくて、ただ単に家付きの風呂が欲しかっただけだしな。
この絵があれば、もうスイートは要らないか。
「よし。皆、準備万端じゃな」
キャアキャアいう声に、おやっさんの言葉。
気を引き締める。
「先に進むぞ」
俺たちは頷いた。
エレベーターが使えない以上、階段を使うしかない。
階段方向に行くのは久しぶりだ。
最下層に到達してからは、地下4階に行ったらエレベーターに直行だったしな。
歩きながら
「途中、魔法を使える魔物に出会ったら、積極的にテイムしていくで」
手で、グレーターデーモンを示しながらエンジュ。
……そうだな。
ギリメカラ、閃光業火1発でキメられそうだけど、念には念を入れておかないとな。
仕留めきれなかったら、魔法をありったけ叩き込んで止めを刺さないといけないしな。
「そうだな」
俺もその発言に賛同した。
「しかし、なんやな」
地図を広げながら、エンジュは続ける。
「こうしていると、まだこの迷宮に入ったばかりのときのことを思い出すな」
懐かしむ。
まあ、それも同意だったけど。
……ひとり、足んないよな。
それも思い出す。
どうしようもないんだけど。
そして
「ここを開けたら、5階への階段広場に出るんだよね。確か」
この階で必須で通るドアのドアノブに手を掛けて、タマミは言う。
俺は頷き。
「そうだな。待ち伏せに気をつけて」
そう、念のために釘を刺す。
「チェック済み! だけど、それはその通りだねぇ」
意識をドア向こうに張り巡らせて、彼女はドアを開けた。
ドアの向こうに、階段が見える。
……よし。
油断なくドアを潜り。ドアを閉じて。
「行くぞ」
俺は促し。
歩き出した。
ミナが先行する。
彼女は壁役だから。
そして数歩進んだときだった。
「……来たか。人間の冒険者たちよ……」
階段前の広場。
その天井から声が降って来て。
激しい風が巻き起こり。
ゆっくりと、それが舞い降りて来た。
それは翼ある大きな人影。
4枚の翼をその背に備えていて。
顔は骸骨に人皮を貼り付けたよう。そして鶏のような鶏冠が頭にある。
胴体は逞しい成人男性。だが、手足の先端は鳥の足だ。
……これは。
エンジュがそれを見て、即座に警告してくれる。
「こいつはパズズや! 風の邪神! アンデッドの王でもあり、その羽ばたきで熱病を流行らせる風を巻き起こす!」
……パズズ……アンデッドの王……
すると、地下1階のビーン一族をワイト化させたのもこいつなのか……?
俺はそういう風に地下1階の出来事の答え合わせをしていたが。
そんなことは瞬時にどうでも良くなった。
何故って……
「あと、こいつに触られたらアカンで! こいつもエナジードレイン能力を持っとる!」
ちょっと待てええええ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます