第48話 このまま進むで!
「それをギリメカラに使用することは可能か? やっぱり、効果範囲は半径20メートルなのか?」
俺は思わず声が大きくなった。
是非、確かめたいことだったから。
すると
「……これは巻物で、詠唱途中の結界作成の部分まで再現できへん。巻物は開いた瞬間発動するからな」
もし、同じ効果範囲で発動させたら、結界があれへんから使用者も即おだぶつや。
閃光業火の直撃を受けて、生きて居られるヤツなんかおるわけないしな。
……だからこれは簡易版。
巻物の外側の説明書きに「任意の点より半径2メートル空間」って書いとる。
半径2メートルの球体の中にあるものを、強烈な熱線と、爆風を浴びせて木っ端微塵にするんや。
……むしろそっちの方がありがたいだろ。
俺は、エリオスが閃光業火を使えることを知ってはいたけど。
迷宮内部でその使用を要請したことは1回も無かった。
理由は簡単。
迷宮が崩壊する可能性があるからだ。
その超高熱の熱線と爆風に耐えられず、迷宮が崩壊してしまうかもしれない。
それを考えれば、危なすぎて使用できなかった。
あれは本来、屋外で使用する魔法なんだよ。
だけど……
この、巻物の閃光業火は、規模が小さいので問題なく迷宮で使用できる……!!
「で……」
ここでエンジュが、ニヤリと笑った。
「どうする……? これから」
ウチは、このまま進んで行った方が良いと思ってるんやけど。
……エンジュの言葉。
それに俺は同意見だった。
ギリメカラがいるから撤退。
そうしたいところだけど。
撤退して、なんとかエリオスに頼み込み、今度はマジックユーザーを連れて挑む。
それが安牌だ。しかし……
俺は言った
「今の状況、おそらく時間を置けば置くほど不利になる。どうしてもギリメカラ攻略の目が出ないならやむをえないけど、ここでこれが出た。ならば……」
……先に進んで行く方が良い。
それがおそらく最善だ。
エンジュがそう言いたいのだろうと察し、俺は頷いた。
そのときだった。
「……素晴らしい決断です」
部屋から、声が聞こえた。
天井あたりだ。
一斉にそちらを見て
そして、凍り付いた。
……バルログがそこに居たのだ。
「……ああ、戦闘態勢を整えなくて良いです。戦う気無いですし、それに無駄ですし」
そう、武器を構えた俺たちを言葉で制する。
そして言った。
「エレベーターは私が封をしました。地下4階から地下8階まで」
主人であるブラケル様に言われたので。
そう、なんでもない風にこいつは報告する。
……ブラケルの封印……
だから、鍵が回らなかったんだな。
それで……?
俺はバルログが言わんとすることが見えなかった。
わざわざここに、そんなことを言いにくる意味が分からない。
するとこいつは、こう言ったのだ。
「……地下9階エレベーター前で、お待ちしております」
……階段を使ってでも、地下10階に行く場合に、必ず通らないといけない場所。
それが地下9階のエレベーター。
そこで待っている。
こいつはそう言った。
それの意味するところ。
それは……
そこで決着を付けよう。
自分はそのための用意を完了させた。
そういうことだろ。
「それでは」
そうして。
俺たちの返事も待たずに消えていく。
あとに残される俺たち。
「……どうするの?」
タマミが俺とエンジュに問うた。
俺たちは
「行くに決まってんだろ」
「やな!」
……そう、力強く答える。
何故なら……
あいつは、放っておいても勝手に最奥を目指す俺たちに、言わなくていいことをわざと告げて来た。
それは、俺たちを甘く見ているということだから
この隙を逃す手は無いだろ……!
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