第45話 地の邪神ギリメカラ

 ……漆黒の単眼の巨象……!

 これは、ミナの話に出て来た怪物。


 大きさは高さ4メートルほど。

 幅は3メートルくらいか?


 目がひとつしかないことと、身体の色が真っ黒で、縞模様入ってること以外は象そっくり。

 そんな怪物。


 確か……邪神……!

 名前はギリメカラだっけ……?


 俺は、腰の愛刀に手を伸ばす。

 ……俺の剣が通じるだろうか……?


 この、邪神相手に……!


 そう、思っていたときだった。


「近接戦闘員、待てぃ!」


 ……エンジュの声が飛んだんだ。




「アイツはアカン! 絶対に武器で攻撃すんな!」


 強い声。

 絶対の禁止命令。


 ……彼女の顔を見た。

 その顔は、とても緊張していた。


 ……何故?


 彼女はギリメカラを油断なく見つめ続けて、続けた。


「邪神って呼ばれる魔物は、ナンボかおる。……やけど、一番ヤバイんが”四大元素の邪神”や!」


 そう言って、さらに続けた。


「お前らかて、創世神話は知っとるやろ!? 世界を作る材料に、バルナとインドラは何を使ったんや!?」


 そこまで言われて……


 俺は、思い出した。


 この世界には、最初、4体の怪物が存在した。

 地の怪物。水の怪物。風の怪物。火の怪物。


 彼らはただ、そこにあるだけだった。


 そこにバルナとインドラが降臨し、この4体の怪物を斃し、その亡骸から世界を創造した。


 ……だが、その怪物たちは自分たちを材料に世界創造が成されたことを恨んだ。

 その恨みは邪神となり、そのせいで世界には天災が起きるようになった。


 地震が起きるのも、津波が起きるのも、山火事が起きるのも、嵐が来るのも、全て邪神の呪いなのである。


 えっと……


 あれは、そんな奴らの1柱なのか?


「あのギリメカラは大地の邪神や! 大地は物質の象徴や! だから、物質による攻撃は一切受け付けず、反射する!」


 そして続く言葉に、俺は自分で分かるくらい、絶望した。


「アイツに斬り掛かったら、お前ら、死ぬで!」


 ……なんだって?




「だからあのとき、ヤリマーンさんとアバズレンさんの頭が吹っ飛んだんですね……」


 ミナが真っ青な顔で、エンジュの言葉に反応した。


 だけど


 ……仲間の頭が吹っ飛ぶのを間近で見てしまったミナとしては、今のエンジュの言葉は色々衝撃的だったのか。

 青い顔でありながら、どこか興奮していた。


 しかし……どうする?


 物理攻撃一切不可なら、魔法攻撃だけど……


 このパーティー、魔法攻撃の専門家……1人も居ないぞ?


 一応、俺は第5位階までの魔力魔法を使えて、ミナが法力魔法第6位階、リンが法力魔法第5位階まで使えるけど……

 あくまで「使える」だからな。


 本職じゃない。


 ……わりと普通に詰んでないか?


「エリオスが居てくれれば……」


 思わず、零してしまう。

 だけど


 しょうがない。


 俺は印を結んだ。


 そして


「ダートルド ギバール オンローバー!」


 ギリメカラの頭を目標に、魔法を発動。

 魔力魔法第5位階の「氷嵐」

 魔法語詠唱が完成すると同時に、吹雪の嵐が巻き起こる。


 パオオオオオ!


 ギリメカラの叫び。

 これはダメージが入っている。暴れているから。


 ……やれることを、やるしかない!

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