第44話 会いたくない相手

「ねぇ、ミナ」


 地下1階でワイトの集団を全滅させて以降。

 地下2階に入って、その後。


 なーんも無い。

 怪しい相手が襲ってこない。


 気が緩みそうだ。

 延々、湿った石畳の通路を歩き続ける。


 そのときに、タマミが口火を切ったんだ。


「なんですか? タマミさん」


 先頭を歩くミナが、タマミを振り返る。


 ミナの視線を受け、タマミ。


「なんでさ、黒になっちゃったの?」


 タマミよ……今、訊いちゃうか?

 それ。


 歩きながら……沈黙。


 そして振り向かず


 言った。


「私……満足できなかったんですよ。白のときは、言えなかったんですけど」


 何が?

 訊かないけど。


「一般常識とか、慎みとか。色々。家の問題もありました。でも……」


 色々あって、マオートコさんとチャラオウさんのツープラトンの凄さで目覚めてしまいまして。

 1たす1が3にも4にもなるんですね。はじめて知ったんですけど。


 ……それに気づいたとき……


 属性石が、黒になっていました。


 そう、ミナは遠い目で言う。

 うん、色々最悪だな。


 俺がミナのことを頭が残念であるという認識を強くしていると。


 ……ふと、リンの顔を見た。


 ……ミナのことを、信じられないものを見る顔になっていた。

 何を言ってんのこの人!? 理解できない! って感じで。


 そこで理解する。

 あ、黒でもミナの在り方はNGなんだ……。

 って……。


 良かった……


 そう、安心していたら。


 地下4階に着き。

 エレベーターが見えて来た。

 何回も利用して来た、黒い観音扉の施設……。


 これで……一気に地下10階に行ける。


「鍵は俺が出すから」


 そう、皆に断って。

 俺は道具袋を探る。


 少し探って、鍵を引きずり出した。


 そしてエレベーターに近づいて、鍵穴に挿した。

 で、回そうとしたんだが……


(……回らんぞ、これ?)


 全然回らない。

 ロックが解除されない


 何故だ……?


 色々考える。

 無理矢理回そうとして、鍵を壊してしまうのはマズい。

 そして鍵穴を壊すのもマズい。


 ……これ、俺だけで解決するのは良くないな。


「なぁ、エンジュ」


「なんや?」


 俺はエンジュの助言を求めた。

 エンジュが俺を見上げている。


「鍵が回らん」


「ホンマか……うーん」


 エンジュは腕を組んで考え始める。


「鍵は正規のものやしな。回らんってありえへんと思うんやけど……」


 色々考えて何とか回答を引き出そうとしている。


 そのときだった。


 パオオオオン! パオオオン!


 ……ミナの顏が硬直した。

 象の鳴き声。


 これは……?


 その数秒後だった。

 ここ、エレベーター前広場に、黒い単眼の巨象が姿を現したのは。

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