第41話 迷宮に突入するぞ

 謁見が終わった。

 下賜された品物は結局


 戦鬼陣羽織は俺。

 金剛石の盾はミナ。

 魔神の戦斧はおやっさん。

 無尽の矢筒はタマミ。

 絵の屋敷と魔力の指輪はエンジュ。


 ……が持つことになった。


 戦鬼陣羽織は正直、俺が前から欲しかった耐性と、冷気無効という新しい戦略を生み出すカードになる性能を持っている。

 正直言って是非欲しい。

 下賜していただけて、本当に感謝している。


 で。

 迷宮に挑むのは、明日にすることになった。

 今日は準備だ。色々と


 そして


「……結局、エリオスはついてこーへんのやな」


 アシハラ商店で。

 薬の材料を大量に購入しつつ。


 エンジュがそう呟いた。


 エリオスは言っていた。


「……気持ちの整理がどうしてもつかないんです。申し訳ありません。皆さん」


 そう、ミナを除いた俺たち全員に謝罪した。

 ……あいつさ。


 ミナの目、見ようとして無いんだよね。

 まだ許せないんだな。


 まぁ、しょうがないけど。


 ……俺はどうなんだろうな?

 ふと、思った。


 俺はミナの話を聞いて、なんというか……


 こいつ、色々頭が残念だけど、悪では無いんだなと、素直に思えるんだけど。


 だって騙してはいないしな。

 反転してすぐ本性をゲロったわけだし。

 考えてみれば。


 黒反転して、頭が残念なのを隠すのを止めたからああなっただけの話なんだよ。

 頭が残念なのは別に悪では無いわ。


 とはいえ


 ……俺は当事者じゃ無いからね。

 当事者じゃない俺が、エリオスの痛みを勝手に判断するのはおかしいわな。

 何度も言っているけどさ。


 そんなことを考えながら。

 目の前でノームの女がせっせと働いている姿を見る。


 エンジュは薬の素材が大量に置いてあるコーナーで、薬作成に必要な素材をポイポイかごに入れつつ。

 店主の居るカウンターとの往復を繰り返している。


 彼女は背が低いから、高いところの素材を取れんのよな。

 手を伸ばしている。高い位置の棚にある素材に。


 すると。


「タケミ! ちょっと手ェ貸してくれへんか?」


 届かないと判断して即座に俺に依頼。

 俺はハイハイと返事して。


 ……このために、俺が居るんだよ。


 そして彼女の求める素材を纏めて棚から抜き取った。

 ……なんかの薬草だった。




「……皆さんが頼りです。勝利の凱旋をお待ちしています」


 次の日の朝を少し過ぎた頃。

 魔界の穴の入口で。

 俺たちは魔界の穴の入口を見張っていた兵士にそう声を掛けられ。


 見送られた。


 一緒に階段を降りていく。

 俺たち6人。


 ……もう、生きてここの階段を登れないかもしれないんだよな。


 俺はそう、薄暗い湿った迷宮の石階段を、ゆっくりと踏みしめて降りて行った。

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