第36話 白も黒もなくない?
「なるほど……」
長い話を聞き終えて。
俺はそう最初に言葉を吐いた。
冒険者の酒場での、白と黒の会話の場。
この場に居る人間は……
俺
リン
エリオス
そしてミナ。
この4人。
「……あの男の人たち……最後の最後で女性を守る意識があったってことなのかな?」
リンの言葉。
リンは地下4階エレベーターで彼らに会ったとき。
チャラそう、異性にだらしなさそうって言って。
あまりいい印象を持ってないみたいなことを言ってたんだが、彼らに。
そのことについて、評価を改めるというか……
意外だったようだった。
するとミナがそんな彼らの認識を不名誉と思ったのか
「チャラオウさんとマオートコさんは、特定の恋人を作らないのと、相手の同意があれば、誰かの恋人であっても構わず食べてしまう貪欲さがあるだけで、とても良い人でした」
そんな、フォローめいたことを言って来た。
……前者は兎も角、後者はイカンだろ。
普通に最低だ。まぁ、最期は漢の行動だったのは認めるが……。
「ブラケル……」
エリオスは、そんな2人のやり取りを無視して。
じっと考え込んでいた。
そして
「……ブラケルの無限復活の魔法、真意は王国に無限に嫌がらせをするため、ではなかったんですね」
そう、自分の考える結論を口にした。
そして、彼の考える仮説を述べる。
「おそらくブラケルは、普通なら魔王が到底飲めない要求を突き付けていて」
魔力魔法の専門家の1人としての癖なのか。
やたらと手振りを交えながら。
語る。
「それでその要求が、魔王の心が折れて聞き入れられるまで、無限復活の牢獄に魔王の魂を閉じ込めたんじゃないでしょうか?」
……なるほど。
それが何なのかは確かめてみないと分からないけど……
例えば、魔王の地位を譲れとか。
そういう感じだろうか。
そこで
「……これからの魔界の穴はきっと、違うよね……」
リンの不安な声。
……だな。
それは、俺も同意する。
無かったもんな。
魔界の穴から、デーモンがほぼ全種類地上に出てくる光景なんか。
地下1階にそんなもんこれまでは居なかったし。
「どうすればいいのかな?」
リンは不安げだ。
……ここにエンジュが居たら、的確な意見を出してくれると思うんだけど。
今、王立図書館に行って、調べ物をしてくれてるんだよな。
多分、バルログのことを。
……だからまあ、何故ここにいないんだという言葉は出てこない。
「……そりゃ、新しい魔王を倒すしかないだろ」
俺はリンの言葉にそう答える。
それ以外無いよな……
しかし
「……これからの2年後の復活は、今の状況と同じである可能性ありますね」
そう。
エリオスの意見。
それは俺も危惧していた。
これまでみたいに、冒険者が一獲千金を夢見る場所じゃなくなるかもしれない。
本当の、滅びの穴になる可能性がある。
……どうすればいいんだろう?
でも……
そのときだ。
「……この状況で、属性で文句言ってる場合じゃなくない?」
リンの発言。
……正直、ありがたかった。
この言葉は、ミナには言えない。
俺も言いづらい。
……リンしか言えないんだ。
「そうだな……」
俺は同意する。
こう、続けながら
「また、300年前と同じ、国がどうにかなるかもしれない状況になったんだ。属性でいがみ合ってる場合じゃ無いよな」
だよな、ミナ。
そう続けながら。
そして俺はエリオスを見たんだが……
エリオスは……俺から目を逸らしていた。
とても、追い詰められた表情で。
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