第29話 最終位階の魔力魔法
今の神罰でレッサーデーモンはほぼ全滅。
グレーターデーモンは、神罰に耐え、先ほどの攻撃魔法の術者を探してざわついている。
そこに
エリオスが突っ込んでいく。
高速化の魔法で、ものすごい速さだ。
おおよそ、倍の速度。
倍の速さで動けるのは凄まじい。
……考えてみるといい。
100メートルを14秒くらいで走れる人間はざらにいるが、100メートルを7秒で走れる人間はまずいないんだ。
だからすごい魔法なんだよ。高速化。
倍速にするだけで、容易に人間の限界を超えてしまえるんだよ。
そういうわけで、今のエリオスの全力ダッシュには、俺は追いつけない。
……まあ、現地についたらちょっとバテるだろうけど。
問題ないよな。そのための防御魔法重ね掛けなんだし。
……とはいえ。
俺の方もあまりゆっくりはしてられないけど。
防御魔法の効果が切れるとまずいんだから。
……駆け足で、俺も追いかける。
現地に着くと、エリオスはグレーターデーモンの集中攻撃を受けていた。
その爪による麻痺ひっかき攻撃だとか
「ダートルド ギバール オンローバー!」
あと魔力魔法・氷嵐の集中砲火。
だが今のエリオスには一切通じない。
爪の攻撃は、何度叩き込んでもエリオスは一切傷つかず。
魔法の攻撃も、全く彼に影響を及ぼさないんだ。
当のエリオスは、攻撃には意を介さず。
ただハァハァ言いつつ、そのまま立ち続けている。
「エリオス! 待たせた!」
駆けつけ、俺は愛刀阿修羅を引き抜き、彼を爪で攻撃していたグレーターデーモンの1体を斬り捨てる。
「では、行きましょう」
俺の姿を確認し、エリオスはニコリと笑うと
「ギフエンス ダートルド フィック キャストリア」
法力魔法の第4位階の魔法「冷気の盾」をまず発動させた。
……俺に対する気遣いだな。
発動までに結構掛かるしな。
俺はそんな仲間の気遣いに感謝した。
エリオスはそんな俺の感謝など気にもせず
続いて彼は、両手で複雑な印を結んで、詠唱を開始した。
「マナ エアイーラズ ハースニ ディバ ビラム……」
……来た。
まずエリオスの魔法語の詠唱で、俺たちの周囲半径3メートル圏内に円形の透明なドームが出現する。
これは、結界。
……ここから外は、地獄になるんだ。
俺は息を呑んで、慎重に周囲を確認した。
周囲に人間は居ないよな、と。
居たら発動できないんだ。
……巻き添えになったら、まず絶対死ぬからな。
ガアアアッ!
そんな俺たちの事情なんてお構いなしに、グレーターデーモンが襲ってくる。
俺はそれを斬り捨てながら。
なるべく速やかに、周囲を確認した。
そして
「エリオス、OKだ」
兵士の不在を確認し、GOサインを出す。
それを受けて、エリオスの詠唱が再開されて……
「ショサル テラス アレーズ ユス ジンラ ジンラ タートレイ……」
そこまでの詠唱を聞いた瞬間。
俺は目を固く閉じた。
目を開けていると、目をやられる!
そして。
エリオスが最後の魔法語を唱えた。
「ルゼオース!!」
その瞬間だ。
外の世界が輝いた。
それが、固く閉じた目にも感じられる。
魔力魔法最終位階の攻撃魔法。
閃光業火。
術者の周辺に事前に張られる結界外の存在を、軒並み超高熱の熱線と、爆風の衝撃で焼き払い、殺し尽くす究極の攻撃魔法だ。
……なんでも。
エリオス曰く、これは炎の魔法では無いらしい。
閃光業火って名前だけどな。
なんでも、物質の最小単位の存在を、融合させるときに出る破壊的なエネルギー「のみ」をこの世界に放出させる魔法なんだとか。
……魔法が周囲を白く染め。
俺たちが目を開けたとき。
周囲半径20メートル圏内が、草一本生えていない焦土になっていた。
……何もいない。
あれだけいたグレーターデーモンたち。
やつらは、魔法の威力に耐えられず、残らず消滅したんだ。
グレーターデーモン。
魔法の効果を打ち消したり、抵抗して効果を弱める能力があるのに。
そんなもんを軒並み無視する超高威力攻撃魔法。
そんな魔法を放った少年司祭は目をゆっくり開きながら
こう言ったんだ。
「……この魔法、使うと気分いいんですよね。……自分でも危ない感覚だと思うんですけど」
そう、高揚した口調で。
笑みを浮かべながら。
「……まだ結構残ってますね」
エリオスはそう、周囲を見回しつつ呟くように言う。
「どうします……もう一回やりましょうか?」
エリオスの閃光業火再使用の提案。
それに対し、俺は
いや……まずいだろあの魔法を連発するの。
やるたんびに、周囲半径20メートル圏内が焦土化するんだし。
魔法の使用回数の問題を考慮しても、避けるべきじゃないか?
それに……下手すると捕まるかもしれんし。
だから
「いや、それはやめとこう。さすがに問題になる」
俺はそう言い残し、生き残りのグレーターデーモンに向かって行ったが。
思わず、足が止まる。
……そいつらの首が、勝手にポンポン飛び始めたために。
これは……
「タケミ!」
……女の声。
すごく聞き慣れた声だ。
振り向く。
……黒装束。十指に全て嵌めた指輪。長い耳。エルフ。
そして綺麗なグリーンの瞳。
リンが忍者の姿で、俺たちの前に現れたのだ。
「助けに来たよ!」
……爽やかな笑顔を向けながら。
うん。すごく頼もしいけど……
あとで彼女のことをエリオスに説明するの、ちょっと厄介だな。これは……
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