第25話 エンジュの家で大鑑定会
「まあ、散らかってるけど入ってや」
俺たちはエンジュに案内されて、エンジュが家代わりに使っているスイートルームに入らせてもらった。
エンジュは木賃宿では無いのか。
それをポツリと洩らすと
「木賃宿は風呂があれへん。風呂屋にいかなあかんやろ。ウチはそれが嫌なんや」
だって。
……こいつも女性だからそこは気にすんのね。
スイートルーム。
ロイヤルスイートの1コ下。
部屋は、本来はかなり高級感溢れる部屋……
の、はずなんだけど。
エンジュの部屋にはメモ用紙が散らかっていた。
それでだいぶ損してる。
ちなみに全部、何か書いてある。
よく分からない字だ。
古代文字だろうか……?
学者のメモだしな。
……しっかし。
広いな。
スイートルームって木賃宿の3倍くらい広いだろ。
……ロイヤルスイートはどのくらい広いんだ?
(なぁ、ロイヤルスイートってここより広いの?)
(……同じくらいかな。ただ、調度品が違うわね)
俺の隣で娘姿のリンが正座して座っている。
俺はリンに小声で話しかけたんだ。
すると、現役ロイヤルスイート居住者から、そんな返答が返って来た。
……どのくらい調度品のレベルが違うんだよ?
まあ、宿のことは置いといて。
……今、俺たちは車座で座っている。
エンジュが自宅に来たら鑑定をやってやるって言ってくれたのだ。
……なので、お言葉に甘えた。
多少、リンが着替えてくる時間を待ったけど。
まあ、積もる話があるってのもあるんよね。
ずっと内緒にしてたわけだし。
「へー。相性ばっちりの組み合わせなんやな」
戦いでは、な。
誤解の出る言い方すんな。
エンジュは俺の話を聞きながら、車座の一員で鑑定をしていた。
俺たちの戦利品……背負い袋と、
4つ。
何か今は、男のアレの彫刻を手の中でくるくる回して、いろんな角度から確認してる。
……えらく確認してるな。
おやっさんは鑑定の行方を見つつ。
酒を飲んでいる。
酒にはちょっと興味あったけど。
……ありゃあドワーフの火酒だろうから、分けて貰うのは止めといた方が良いな。
多分、鑑定どころじゃなくなるだろうし。
ドワーフは酒が好きだからなぁ。
水代わりに飲むんだよな。
いや、本当は水の代わりにはならんのだろうけど。
エンジュ曰く「酒は飲むほどシッコ出るから水の代わりにならん」らしいし。
「うん。全部鑑定できたで」
……そんな感じでいらんことを考えていたら。
エンジュの鑑定が終わった。
……現役パーティだったときは、がっつり鑑定するときは全部エンジュにお願いしてたな。
簡単に「呪われてるか否か」「どの程度強力な魔法が掛かってるかどうか」「有名な品かどうか」程度の鑑定のときはエリオスにお願いしてたけど。
専門家の解説がはじまる。
「まずこれ。これは……無限のバック」
エンジュは戦利品の背負い袋を持ち上げて、俺たちに示した。
背負い袋は無限のバック……ふむ。
で?
「結論から言うと……50万ゴルド出すから、ウチが買いたい。これ」
えっと……。
いきなり、鑑定者からの意外な言葉。
「その効果は……容量無限の魔法の背負い袋なんや。口の大きさが許すなら、生き物以外は何でもいくらでも入れられる。そして重さは背負い袋1個分のまま」
……なんと。
「ウチにくれるなら、大粒ダイヤ5つと交換したる。……業者に持って行けば、1個10万ゴルドで売れる品や……どや?」
「売った!」
リンが手を上げて発言。
俺にも迷わせろとちょっと思ったけど。
このへん、黒っぽいし。
……まあ、俺にはそれほど重要じゃないしな。
このアイテム。
なので俺も
「それでいいよ」
許可した。
……エンジュはホクホクだった。
で、次。
幟。
エンジュは言った。
……トンチキなことを。
「これは妊婦の幟」
にんぷののぼり……?
何だいそりゃ?
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