第26話 残り3つは

「古代王国時代にな、妊婦に体当たりする、とんでもないおっさんがおったんや」


 エンジュが解説してくれる。

 それは……わりと胸糞な話。


「自分の不遇を、社会的に保護されている妊婦にぶつけることで晴らそうとする、とんでもないヤツやな」


 で……


 最初は、ワッペンをつけて周りに知らせていたんだけど。

 やがてそれでもそんな不届きなおっさんがふざけたことをすることをやめなくて。


 ワッペンが幟になり。


 最終手段として、マジックアイテムになった。

 それがこれ。


 その効果は……


「……これを背中に立てると、装着者が誰かに直接的な敵対行動……物理的加害行為、魔法的加害行為やな。それをせん限り、敵対者の攻撃の直接的標的ではなくなる」


 えっと……


「それはつまり、こっちから攻撃しない限り、誰にも攻撃されなくなるってこと?」


「直接、な。範囲攻撃の巻き添えは普通にあるで」


 それでも十分すごいと思うが……。


「それもエンジュが持つべきだと思うんだけど」


 ……またリンが発言。

 うん……それはね。

 俺も思ったさ。


 ……でも


「あいにくウチにこれを買い取れる金が今はあれへん」


 しれっと。


 ……だよなぁ。


 50万ゴルド、虎の子だったんだろうなと思うから。

 それは予想してた。


「多分、売ったら平気で20万越すで。そんな金、さすがに今は無いわ」


「だったら、タダでいいよ」


 するとリンからそんな発言。

 俺は驚く。


 えっと……?


 リン、それでいいの?


 そうすると彼女は


「……50万ゴルドも貰い過ぎのような気がしてたから、これでトントンだと思うの」


 優しい笑顔で。


 ……ロイヤルスイートなんかに住み着くわりには。

 お金関係で遠慮深いところあるわな。彼女。


 お金の山分けのときでも、端数を全部貰うのをすまなさそうにしてたし。


 うん……まあいいか。


「じゃあその幟は進呈する。鑑定料金で」


 そう、宣言。

 エンジュはちょっと戸惑いながら


「えっと……ああ、うん。分かったわ。スマンな」


 言って。

 さっき買い上げた無限のバックに幟を仕舞いこんだ。


 次に行こう。次。


 次は……男のアレの彫刻。

 これは……?


 エンジュは言った。

 真顔で


「これは道鏡の膝や」


 ……膝なの?


 すると、エンジュが解説してくれる。


「古代王国時代に、道鏡という坊主がおって、そいつがアレがデカくて、アレのデカさだけで国を乗っ取ろうとしたんや。道鏡のアレは、三つ目の膝と言われとってな」


 曰く、デカすぎて座ると膝が3つあるように見えたらしい。

 どんなんよ。


「それにちなんで作られたマジックアイテム。これを生き物の膣か肛門にねじ込むと、そいつを調教テイムできる」


 ……見た目はあれで、使用方法もアレだけど、メッチャ強いな。


「ありがとう」


 礼を言って、リンはそれを受け取るために手を差し出した。

 それは受け取るんだ……


 まあ、高く売れそうではあるけどさ。


 リンはその道鏡の膝を、大切そうに自分の鞄に仕舞いこんだ。


「で、その薬は?」


 俺は最後の戦利品を指して訊く。

 するとエンジュは答えてくれた。


「これは貧乳薬。女の身体に入ると、どんな胸囲の持ち主でも、全員必ずぺったんになる毒薬や」


 ……これは純粋にろくでもねぇな。

 誰も幸せにならないじゃないか。

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