第23話 おやっさんとエンジュ
棘のついたプレートアーマーと、雄牛のような角の生えた鉄兜を装備したおやっさん。
武器は愛用のグレートアックスを装備している。
エンジュは赤いダイヤマークの意匠がついたローブを着、背中に背負い袋を背負っている。
そしていつもの丸眼鏡。
……この彼女の掛けている丸い眼鏡は、実はマジックアイテム。
本人の意思無しでは、絶対に外れないし、壊せない魔法が掛かっているんだ。
だから彼女はこの眼鏡を愛用しているし、自身のトレードマークにもしてるんだが。
この2人。
……さっきまで素材狩りに精を出してたんだな。
「……おやっさん。エンジュ。久しぶり」
そう、再会の挨拶をして
「……見ての通り。死闘している」
言葉少なく返答。
すると
「……分かった。加勢するぞ」
「ウチらが来たからもう安心や」
……それだけで、俺の味方になってくれる。
素晴らしい仲間だな。
そんな俺たちに
「……ご馳走候補の追加ですか? ……ドワーフは……食べごろ。……で、ヒュームの子供? いや、ノームですか」
怪人は余裕を示しながら
「そこのノーム女性……成人してますよね?」
顎に手を当て、そう訊いてきた。
すると
「女にトシ訊くとか、どないなってんねんこの変態が!」
言いながら、球体を投げつけた。
怪人はその球体の投擲を難なく躱す。
投げつけられた球体は、床に落ちて割れ。
……その中身をぶちまけて、もうもうと煙のような粉末を舞わせた。
あ……これは……
俺は気持ち、息を止める。
もらい事故は嫌だから。
だが怪人は
「……何ですかこれは……?」
訝し気。
その次の瞬間だった。
ゴホッ! ゴホッ!
……怪人たちが、せき込み始める。
ドヤ顔のエンジュ。
「……刺激作用のある植物の実の乾燥粉末や……。例え毒ガスに耐性あっても、辛いはずやで……?」
「ワシの出番じゃな」
せき込む怪人に、おやっさんが力強く突っ込んだ。
足が短いはずなのに、それなりに速い。
踏み込んで、戦斧一閃。
怪人の1人の、2本足をまとめて切断し、這うしかできない生物に変えた。
せき込みながら怪人は叫んだ。
「お前は何故これが平気なのだッ!?」
「慣れた」
……これ、マジなんだ。
エンジュがこの刺激性植物の粉末玉っていう武器を作ったとき。
自分から「ワシがそれが平気になって、そこに乱入できれば、きっと良い仕事ができるな」と
刺激植物粉末を余分に作らせて、何回も自己吸引してそれに慣れるまで繰り返した。
曰く「ワシは自分のこだわりで戦士に留まっておるからの。こういうところで根性を見せんと、このパーティーの居場所が無いわい」
こういうところが俺の尊敬するところなんだ。
おやっさんの。
「これに慣れただとッ!? あなたは異常者ですか!?」
怪人はせき込みつつおやっさんの忍耐力を異常者扱いした。
だがおやっさんはそれに取り合わない。
「エンジュ、次は煙幕玉じゃ」
「りょーかいや」
ごそごそして、すぐに黒い球体を取り出すエンジュ。
……暗視能力があっても、煙幕は見通せない。
別に暗くなるわけじゃないものな。
物理的に、煙幕が邪魔で見えなくなるだけだから。
そして
「えーい!」
子供っぽい気合を込めて、エンジュが煙幕玉を投げつける。
すると
「ちぃ! 覚えておきなさい! こちらも対策を立てさせて貰います!」
怪人たちの1体がそんな捨て台詞を残して跳躍。そして逃走。
直後破裂した煙幕玉の煙の中で。
目玉が不要なレベルで感覚を磨いたおやっさんが、もう1人の怪人の足を切断し、倒れさせた。
「逃げよったな」
一仕事終えた後、肩にグレートアックスを担ぎながら、おやっさんはそう呟く。
そんな中
おやっさんにやられて足を失った2人の怪人。
その2人は、煙幕玉の煙の中で、致命傷なんて受けていないはずなのに。
悲鳴もあげず、ドロドロに溶けて、消え去っていった。
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