第7話 無双正宗

 そんで。


 俺たちのパーティは解散になった。

 ……方針がな、合わなかったんだよ。


 タマミのやつは「最下層で稼ぐために、他のパーティからタマミたちもメンバーを引き抜こうよ!」って言い出して聞かないし。

 おやっさんは「他人の絆を壊すような真似、やるべきでは無いな。ワシは賛同せんからな」と拒否。

 エンジュは「最下層潜れへんでも、そこそこの魔物を倒して素材を狩ることはできるし、それでしばらく様子みようや。募集だけ出しといて。それに、エリオスだっていつか立ち直るかもしれへんし」と気長。


 ……俺は……そのどれにも賛成じゃ無かったんだよな。

 まあ、俺の意見が常識外れなのは分かってたから、そのときは黙ってたんだけど。


 俺の意見は……


 このまんま、最下層に潜り続けよう。


 ……これだったんだ。

 常識外れだろ?


 だから、言えなかった。


 ……理由はあるんだよ。


 最下層で無いと、戦う意味が無いんだ。

 俺には。


 その理由は……


 俺はね、ある刀がどうしても欲しいんだ。

 かなり大昔に戦災で失われたとされている、無双正宗っていう伝説の刀が。


 無双正宗……この刀は、鎧殺しって言われてて。

 斬れないものが存在しないと言われている。


 この刀の前では、鎧を着ることはメリットでは無くデメリット。

 何故なら、鎧を豆腐に包丁を入れるように斬ってしまうから。


 重厚な鎧の装備を、完全防備と思わせて、実は自殺志願者の自己拘束。

 そういう状況にしてしまう、伝説の刀。


 そしてその秘められた力を解放すると、斬った相手の魂を滅ぼして、蘇生魔法だろうが何だろうが、どんな手を使っても絶対に復活できない状態にしてしまうという。

 そう言われている。


 戦災で失われたのも、どうもその秘められた力を解放したせいらしい。

 何に対して使ったのかは知らないんだけど。


 だから欲しい。

 絶対欲しい。


 ……これは、俺の親父の代からの夢なんだよね。


 今の俺の愛刀の「阿修羅」だって、本当は失われた名刀のひとつなんだよ。


 親父がここの迷宮でこれを見つけたんだけど。

 現役でここに潜っていたときに。


 で、こう思ったらしい。


「ここ、魔界の穴では、過去に失われた素晴らしい神器級の武具も、宝物として出現する可能性がある。……ならば、伝説の無双正宗だって出るはずだ」


 って。

 残念ながら、親父の代では無双正宗は宝箱に出てこなかった。

 だから、俺はその夢を叶えたいんだ。


 ……これは、親父の代からの夢なんだよ……。もう一度言うけど。


 だから……


「おやっさん、タマミ、エンジュ。……悪いんだけど、地下4階から最下層直通エレベーターの鍵……俺にくれないか? 事態が解決しない限り最下層に行く予定が無いんなら」


 そう言って、頭を下げて頼んだんだ。


 ……3人は、俺の言ってることが最初理解できないって顔をしていた。

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