甲子園彌榮之祝詞(こうしえん いやさか の のりと)
松嶋豊弐
第1話
こちらは整理番号D-6468 。アーカーシャの保管庫で厳重に管理されている資料である。
ご存知の通り、時空切開により採取した過去や未来の直接的な観測行為は、複数の時空の均衡を崩す危険性が高いため、現在は慎重な取り扱いが必要とされている。その一方で、ある未来の時点で時空観測者が禁忌を犯すことにより、近未来には過去が流入するであろうということも観測されている。
この時空の混入により世界文明は崩壊するものと見られている。科学の衰退した未来では、人類は不可思議な文化を生み出しており、文化人類学上大変重要とされている資料をこれから諸君に見てもらう。
なお、観測者は時空の干渉を受けるため、記述にも現代語とは異なる点が現れる。言語学の観点からも、これらの資料を活用いただければ幸いである。
『
そして、
逞しき
さて、最も強きを定める
白き衣の若人らは二手に別れ、
しかしながら、始めの球はわざと打たず、打ち手は空振りするのがしきたりでございます。これには様々なことが言われとりますが、「負けるが勝ち」を示す、あるいは、元々
そもそも、
わてが解くのを聞いていただきながら、
勝って歓ぶ者、負けて泣く者……
負けた組は土を集め、持ち帰ります。この
勝った組が
──以上が、
資料の言葉遣いや文化から鑑みるに、特に20世紀あたり、つまり昭和時代や平安時代の時空が流入し、世界文明崩壊時の未来に混入するであろうと考えられる。昭和期の大阪弁を基本とし、語彙のほとんどが大和言葉で、時折古語が交じる点も興味深い。なお、時空の混乱が起こる前にも、外来語の乱用に反発して、日本では大規模な日本語純化運動が起きる点も考慮されたい。
見ての通り、甲子園での夏の全国高校野球選手権と神道が習合しており、スポーツ競技でありながらも、宗教行事としての役割を持ち、相撲に似た側面が見受けられる。
高校球児らは一種の稚児で、試合は
阪神タイガースやプロ野球に似た記述もあり、神道野球においてはビールが
この資料では、甲子園における様々な謂れが語られるが、それらが真実であるかはまだ不明であり、儀式の発生と発展を確認するため、他の時代も参照する必要がある。さらなる研究の進展が期待される。
さて、次に見ていただく資料は、裸祭りと花園の全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会が習合しており、全裸でラクビーを行うもので、古代ギリシャのオリンピックのように鍛えあげられた肉体の躍動を賞賛し…………
甲子園彌榮之祝詞(こうしえん いやさか の のりと) 松嶋豊弐 @MatsushimaToyo
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