第133話、ダンジョンにもご褒美がほしい
冒険者ギルドで、ちょっと冒険者たちを視たおかげで、冒険者というのが大体わかった。今まではフォリアくらいしか、冒険者がいなかったから、誰がダンジョンに挑戦してくれるかはわからないが、大いに参考になるだろう。
ギルマスのアーミラからは。
「たまにでもいいので、冒険者たちを視てやってくれ」
とお願いされた。
私の助言を受けて、冒険者たちが新しいことを始めて、何人かは能力に目覚めたとか言うが、はっきり言えば新たな能力を得た者は極少数だよ。大半は、元から持っていた力を使っていなかっただけだ。
だから、私はそれを教えただけで、それ以外に何もしていないよ。
一方、コング氏は。
「ジョン・ゴッド氏のダンジョン、オレも挑戦させてもらうぜ!」
リハビリを兼ねて、パーティーを組んで、ダンジョンに挑むそうだ。ほら、やっぱりこの人、まだ心は若く、冒険者を諦めてなかったのだ。
さて、魔境の我が家に戻ったら、イリスがフォリア、ウイエに声をかけていた。
「ダンジョン、攻略しましょ!」
何だかテンションが高い彼女も珍しい。いったいどうしたんだ?
腕試しにどう、と誘われたフォリアが乗り、ウイエも頷いたが。
「ねえ、ジョン・ゴッド。ダンジョンにご褒美を巻いたほうがいいと思うのよ」
「ダンジョントレジャー、お宝ってやつ?」
それなら、それっぽいのをいくつか配置しておいたが?
「私、すっごく強い杖が、欲しいなぁ……」
おねだりするように甘えた声を出すウイエ。普段そういうことをしない彼女だから、ギャップが凄いが、残念。この家、正確にはご近所には、君よりもっとお強請りが上手い人がいるんだよね。
……まあ、悪魔と比べては勝ち目はないか。シスター・カナヴィは魔性のアマアマボイスで囁く。
閑話休題。
「ふうん、杖ね……。何か適当なものを放り込んでおこう。……どこで出るかはわからんが、まあ頑張って」
「本当!? じゃあ、頑張るわ!」
モチベーションって凄いなー。他人事を装っていたら、今度はドワーフのリラがやってきた。
「そのお宝には、アダマンタイトとかオリハルコンはあるのです?」
「……」
目が笑ってないんだが、リラさんや。
「お宝にレア鉱石はあるのです?」
顔が近い!
ダンジョンなら魔力の集まりで発生した魔法鉱物の鉱床があったりする。そう考えれば、ダンジョンコアを操作すれば、魔力と引き換えに作れるだろうが。
鉱床とか作ったら、ダンジョンにレア鉱石目当ての連中も群がることになるんだろうな。それは冒険者かもしれないし、あるいは専門業者かもしれない。
王族が管理している秘密の場所にはなっていても、それが世間に広まれば、貴族や有力者、商人が一般に解放するように王族に圧力をかけることになるだろう。
いや、別に鉱床じゃなくていいのか。リラは、宝物にレア鉱石がないかと言っているのであって。
ダンジョンドロップであるなら、ダンジョンに入っての探索は冒険者のみとなるし、トレジャーであれば確定もないから、見つければラッキーで済む。
「ランダムで入れておこう」
「わぁい! さすがはマイスター・ゴッドなのです! ――フォリアさん、ウイエさん! あたしもダンジョン探索に行くのです!」
元気だなー。
何故だかわからないが、やる気を出しているので、ご褒美にも手を加えておくか。
知識の泉で、ダンジョントレジャーを改めて研究。ダンジョンを作った時に、罠を置く都合上、ダンジョンの宝物について一応調べた。
そこでそれっぽいものを適当に選んだんだけど……。こっちも少し手を加えるべきかもしれないな。
・ ・ ・
「うっわ、何ですか、これはっ!?」
やたらテンションの高いリアクションは、ミリアン・ミドールだ。
私の工房にやってきたミリアンは、開口一番驚いている。
「……んー、ダンジョントレジャー」
私は工房に並べられたそれらを改めて見回した。
「うーん、中々絶景だねぇ」
武器や装備類が、色ごとに並んでいるのは見ていて気分がいい。
赤は火属性。黄は光、緑は風、水色は氷、青は水、紫は雷、黒は闇、茶は土。
それぞれの魔法属性に合わせて、片手剣、両手剣、ナイフ、片手斧、大斧、槍、杖、盾、鎧各種、マントやローブも属性の色ごとに用意した。
いつぞやのドレス製作して作りすぎたけど、その時みたい。でもこれらは一つあれば足りるというものではなく、ダンジョンにバラまく上では、ある程度数が必要となる。
「これ、どうしたんですかっ? まさか作られたんですか、ジョン・ゴッド様!?」
「いや、ここにあるのは私ではなく、ダンジョンコアに型を放り込んで作ったものだ」
「え、ダンジョンコアに武具生成機能はなかったはずでは……?」
もともと、ここにあるダンジョンコアは、かつてミリアン・ミドールが入手し修復という名の改造を施したものだ。
それを一度バラバラにした後、私が直したわけだが。
「いや、生成機能はあったよ。ダンジョンコアだよ? ダンジョンにある物は大抵生成できるようになっている」
むしろ、ただの洞窟などに宝物なんて普通はない。ダンジョンを作るコアだから、そういうダンジョントレジャー的なものだって作れる。
「なるほど、ダンジョンの形やモンスターばかり気にして、武具や装備など気にしていませんでした。……しかし、こうも武具を量産できてしまうとは、凄まじいですね、ダンジョンコアは」
「そうだね。これ一個、それを使いこなせる魔力さえあるなら、他に何もなくても生きていけるだろうね」
住居はもちろん、警備のモンスターのほか、食料、武器、様々なアイテムなどなど。
「ダンジョンコアで作った武具を売れば、それだけでお金が稼げるのでは?」
「ダンジョンマスターは商人かー」
あははー、それも一つの活用法。ただその理屈でいえば、お金だって生成できてしまうんだよな。まあ人間の社会では、一般でお金を作るのは死罪も普通の重罪らしい。だからやらないんだけどね。
そもそもお金に執着していないし。
「さて、量産品はこの辺りにして、そろそろレアものを製作してみようかね……」
個数限定。見つけたらラッキー。そういうのもあっていいだろう。
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