第34話、ドワーフ職人は驚く
職人とは厳かであるべき、と思うのです。
あたしは、機械職人をしているリラと申す者です。見ての通り、ドワーフの乙女なのです……ふんす!
機械。かつてご先祖様も取り組み、研究、そして再現してきた古代文明の機械。それは魔法のこめられたものもあれば、魔力を一切使わない、仕掛けのみで動くものもあるのです。
あたしは、そういう機械を調べ、時に解体、時に組み上げて、その技術の再生をする者なのです!
ということで、古代遺跡探しと発掘は割とよくあることなのですが、今回はソルツァールの王族からのお仕事なのです。
魔境に行き、そこに住むジョン・ゴッドなる人物を見極めてきてほしいと、頼まれたのです。
魔境に住んでいるとは、随分と物好きがいたものです。うちの爺ちゃんも危険と言われる場所に拠点を構えていたことがあるので、他にも同類がいたようなのです。
王国側は、ジョン・ゴッド氏について計りかねているが、何とか評価したいようなのです。
すでにそこを知っている王国魔術師のウイエ・ルート女史曰く、ちょっとおかしなゴーレムが稼働している他、魔境にも古代の遺跡があるのだとか。それはとても楽しみなのです。
移動には転移の石を使うそうで、これは驚きなのです! あたしも初めてみるのですが、エルフの魔道具職人も初めてらしく、かなり食いついていたのです。……興味はあるのですが、そこは譲ってやるのです。
そしてあっという間に、深い森とそこに立つお屋敷に着いたのです。これはまた随分とおかしな家に住んでいるのです。透明ガラスをいっぱい使ってるのです。柱や枠はしっかりしていそうなので、構造自体は問題なさそうです。でもガラスなので、石とか飛んできたら、すぐに割れそうでそっちが心配なのです。
でも些細な問題だったのです。あたしは、庭で動いている人型――ゴーレムに気づいたのです。
ドワーフのあたしからしたら、およそ倍くらいの高さ。ゴツくはありますが、ゴーレムとしては、可もなく不可もなしといったところ。歩行動作がスムーズで、ゴーレムらしくないのは目についたのですが……あれ、装甲は何でできるのです?
パッと見て、材質がわからないなんて、ドワーフとしてあるまじきことなのです。なんだろう……? あたしの見たことがない金属。古代文明の開発した未知の金属? 頭を巡らせている間に、ジョン・ゴッド氏がそちらへ誘導してくれたのですが――
「紹介しよう。うちで保有しているアダマンタイトゴーレムの――」
アダマンタイト――伝説の超鉱物にして超金属の名前なのです。脳味噌が一瞬で吹っ飛んだなのです。
気づけば、あたしは一瞬気絶していたのです。アダマンタイト……アダマンタイトっ! 本当なのですか!?
とか声に出す前に、すでにそのアダマンタイト・ゴーレムが目の前にいたのです。するとすっとお辞儀をするのです。
『ハジメマシテ、オ客人。ゴーちゃんト申シマス』
はうぁっ! 喋り申した!
ここでもあたしはどうやら気を失ったらしく、その後のことはしばし覚えていないのです。
・ ・ ・
ゴーレムは喋らないのです。
でもそれは思い込みだったのです。よくよく考えれば、ゴーレムはご主人様の命令に従うのです。複雑な命令はこなせないのですが、命令がわかるということは、理解をしているということなのです。
喋らないのは、そういう機能がないからだけなのです。だから発声する仕組みがあれば、ゴーレムだって喋るのです。
これは革命的な発想なのです! 何故、今までこんな簡単な事実に気づかなかったのか。
ゴーちゃんと名乗るアダマンタイト・ゴーレムは、ゴーレムにしては非常に穏やかだったのです。
そこらのゴーレムよりも数段賢く、これならば複雑な命令にもある程度答えれる性能を持っているのです。凄いのです。ぜひ解体して、その仕組みを知りたいのです!
ただ、ゴーちゃんの優しいところを見ていると、これが作り物ではなく、本当は魂とか、そういうものが入っているのでは、と想ったりしたのです。
要するに、体はゴーレムだが、人間や亜人が中にいる、そういう生物なのではないか……と。
ゴーちゃんは、庭やその近くにあるものを見せてくれたのです。よく見渡せるように、あたしを肩車してくれたのです!
高ぇー、やっぱ高ぇのです。ゴーちゃんの目線より高いので、お屋敷もさっきより近くに見えたのです。中も楽しみですが、まずは庭なのです。
おおっ、ウォークバードのような二足の大型鳥のゴーレムがいるのです! ひと目見てゴーレムとわかったのですが、あれをゴーレムの形に再現したのは初めてなのです! 飛べない機械鳥なのです!
いいなあ、バラしたいなぁ、作りたいなぁ、なのです。ゴーレムも、もっと自由な形で作っていいという気づきを得たのです。
そもそも、ゴーレムってどうして人型なのか、謎なのです! 今にして思えば、お馬さんの形でもよかったのですが、ダンジョンや遺跡に出てくるゴーレムはどれも同じような形ばかりだったのです。
閑話休題なのです。
ゴーちゃんが最後に庭で見せてくれたのは、奇怪な形をした船のようなものなのです。
『コレハ、遺跡ニアッタ物カラ、主サマガ作ラレタ飛空艇デス』
飛空艇!
これにはあたしは吹っ飛んだのです。この時もどうやら気絶してしまったらしく、ゴーちゃんの説明を聞きそびれ、いつの間にかジョン・ゴッド氏も近くにいたのです。
魔境に遺跡があるらしいという話は聞いていたのです。そこで見つけた古代文明の遺跡。飛空艇の残骸を見て、ジョン・ゴッド氏は自分で作ってみようと思い立ち、実際に作り上げてしまったそうです。 んな馬鹿な!
「ジョン・ゴッド氏は、機械にもお詳しいのです?」
「勉強しているからね」
そう言ったジョン・ゴッド氏は、屋敷にあたしを案内し、図書室へ連れていってくれたのです。
そこでエルフ氏が、すでにおかしなテンションで読書をしているのを見たのですが、すぐにそれも無理ないとわかったのです。
本がいっぱい。しかも様々な分野の専門書がずらーりとあったのです。あたしも歴史と古代文明、遺跡本、機械本などを見つけ、どれから読んでいいかわからないくらい迷ったのです!
なるほどなのです。そりゃあこれだけの本で勉強できるなら、飛空艇だって作ろうなんて思えるのです。
もちろん図面を書き上げたり、部品から作ったりと、完成に至るまでの道のりも遠いのです。でも、ジョン・ゴッド氏には、それを行う知識と技術があるのです。
マイスター・ジョン・ゴッド。
彼は、この王国一、いや大陸でも一番の技術者、まさに神様のような人に、違いないのです!
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