第71話 支配の追加
ザルムとキルザはゴールドマッシュを要らないと言う、理由を尋ねると場所を教えてくれた奴に悪いからと。
それに少量のゴールドマッシュをギルドに売っても、高価な物と噂になれば後が面倒なので要らないそうだ
俺が全てのゴールドマッシュを受け取る代わりにハイオークやブラックベア等の獲物は全て二人に渡した。
序でに乾燥させて粉にした、ゴールドマッシュの粉末も小瓶に入れてそれぞれに渡しておく。
日陰で風にあて、程よく乾いたら陽に当ててカラカラにしてから薬草袋に入れて籠の中。
籠に一杯と1/3採れたので満足して茸狩りを終えると、その間に狩った野獣を売りに街に戻る事にした。
買い取りカウンターで獲物が多数と申告して解体場へ入らせて貰う。
順番待ちの列が出来ているが俺達の様な少数のグループがいない。
5、6人から8人ほどのパーティーばかりで、俺達はジロジロと見られて居心地が悪いが、品定めをされている様だ。
巨大な角を持つ牛や真っ黒な虎・・・だよな。
それにブラウンベアに金毛の熊、ボソボソ声ではゴールデンベアと聞こえる。
ブラックベアの2倍位の体長で、よくこんな物を討伐しようと思うなと感心する。
俺達の番になり指定の場所に並べるのは俺の仕事。
ザルムとキルザのマジックポーチはランク3の物で、多数の獲物を入れるのには容量が足りないので俺が預かった。
ブラックタイガー、1頭
ハイオーク、6頭
オーク、7頭
エルク、3頭
フォレストウルフ、9頭
グレイウルフ、7頭
ビッグタイガー、1頭
ホーンボア、4頭
全てを並べ終えると、ザルムのギルドカードを預けて食堂に向かい、エールで乾杯。
「久々に冒険者らしいことをした気分だぞ」
「ああ、最近少しは狩りもしているが、以前のパーティーに戻れないし新しくパーティーを組むにもなぁ」
「それなりに信頼出来る奴があぶれているって事もないからな」
「それより、フォレストウルフの討伐はどうやったんだ? 見ていろと言うから見物させて貰ったが、それこそ魔法でも使っているのかと思ったぞ」
「テイマー神様の加護を授かった力としか言いようがないな。説明しろと言われても、神様のやることだからなぁ」
「それに時々、キラービーがお前の上に飛んで来るよな」
「あの羽音を聞くとぞっとするぞ」
「片付けを命じられたけど、無数の刺し傷と、毒で腫れ上がり変色した顔は見られた物じゃなかったからな」
「俺と一緒に居れば刺されることはないと思うよ。一人で討伐していると、協力してくれる可愛い奴さ」
「それで、用は済んだので王都に帰るのか?」
「いや、森の奥を見て回りどんな野獣が居るのか知っておきたいな」
「一人でか?」
「俺は基本的に一人だよ。それに逃げ足は速いので大丈夫さ」
「確かに逃げ足は速そうだよな」
「あの木登りにはビックリだぜ」
「ミーちゃんに負けず劣らずだしなぁ」
解体係が査定用紙を持って来たので、挨拶をしてお別れする。
野獣が多いのなら春まで此の地に居て、もう少し支配の数を増やして面倒事を減らす準備をするつもりだ。
野獣ではゴールデンベアやアーマーバッファローくらいが野獣の大物で、ドラゴンなんてのは相当奥地へ行かなきゃ出会わないそうだ。
滅多に見る事の無い野獣まで支配は必要無いだろうけど、タンザ周辺で出会す程度の獣の支配は手に入れておきたい。
フーちゃんの前に数人の男女が立って居て何やら話し込んでいるが、話の内容からテイマー達の様だ。
フーちゃんを呼ぶと、顔を見合わせ「兄さんの使役獣かい」と聞いてくるが敵意はない。
その代わり好奇心満載の目付きだ。
「そうだが何か?」
「二種三頭も従えているのか?」
「まあね、俺はテイマー神様の加護を授かっているんだ」
「どうやって二種三頭もテイム出来たんだ? あ、俺も加護を授かっているんだが、グレイウルフ一頭をテイムするのが精一杯でな」
「二種三頭、しかもフォレストウルフを二頭も従えているのなら、能力は高いの? どれ位の能力が有れば、フォレストウルフをテイム出来るのか教えて貰えない」
「残念ながら俺の能力は1なんで教えようがないよ。それこそ加護のお陰としか言えないね」
「能力が1ですって、嘘でしょう」
「信用しろとは言わないけど、俺は野獣が死ぬ寸前まで痛めつけてからでないとテイム出来ないんだ。あんた達もそうなら教えようがないよ」
「ファングキャットは役に立つの?」
「俺の食い扶持は、此奴が狩ってくれているからね。ウルフは俺の護衛なのさ。今度会った時にテイムの話をしようか」
他のテイマーに興味はあるが、今は支配を獲得する方が先なのでそのまま街を出て森に向かう。
* * * * * * *
森に入ってビーちゃんを呼び、大きな毛玉を探してとお願いするが、大集団を使っての捜索はせずに、50匹前後で周辺のみの捜索に限定する。
周辺に居なければ奥地へと移動を繰り返し、フーちゃんの鼻とミーちゃんが木の高みから周辺を探る。
後は俺の索敵を使い小動物を探して技量を磨く、何せ索敵や気配察知と隠形が上級の下になってから上達する気配がない。
のほほんと生活して冒険者としての生活はミーちゃんやビーちゃん達に頼りっきりなので反省。
街ではフーちゃん達が居るだけで護衛になるので、怠けすぎと反省。
索敵で見つけた草食獣は、待ち伏せに都合の良い場所まで静かに移動して隠形で待機。
フーちゃん達に獲物の場所を教えて俺の所へと追い込んでもらう。
此れが中々に難しく、目の前に来る事は滅多に無くて、近くまで来て弓を引くと動きで居場所がバレる。
逃げるのが速いか矢を放つのが早いか、若しくは森の中での追いかけっこになる。
そうなると一番早いのはフーちゃん達で、灌木や草叢は突き抜けて行きあっと言う間に追いついて食らいつく。
その点肉食系は向かって来るから闘いやすいが、ウルフ系やドッグ系はほぼ支配済みなので放置。
手子摺ったのはゴールデンタイガーやキングタイガーで、フーちゃん達二頭では腰が引けて追い込めない。
下手をすれば逆襲を受けて怪我をするので、ポーションのお世話になる羽目になる。
ポーションを試しに使ったら、フーちゃんの怪我が治ったので野獣にも効くと判ったのが収穫。
正面切って闘っても、巨大なタイガーの猫パンチ・・・タイガーパンチは恐ろしく、耐衝撃の防御がなければうかうか近寄れない。
オークキングの王の威圧も効き目無しで、ミーちゃんの俊敏とオークの剛力頼みの闘いになった。
魔鋼鉄製の短槍で殴り、死なない程度に傷付けての闘いは気を使うし、失敗すれば同じ事を繰り返さなければならないので疲れる。
動きが鈍ると(テイム)で名前と数値を確認して、手加減しながら(テイム・テイム)を連続して呟くことになる。
支配を手にれたのは、ゴールデンベア、レッドベア、ブラウンベア、ブラックベアの熊ちゃん四種。
猫科がゴールデンタイガー、キングタイガー、ファングタイガー、ビッグキャット、ブラックキャットの五種。
草食獣はビッグエルク、エルク、レッドホーンゴート、ゴールデンシープ、ビッグホーンシープ、オレンジシープ、グレイトドンキの七種。
使えそうな能力として、ゴールデンベアの怪力無双、ゴールデンタイガーの眼光、ブラックキャットの夜目、エルクの隠形の四つを手に入れた。
後は咆哮とか猫パンチの衝撃、レッドホーンゴートの崖登り等微妙なものばかり、
グレイトドンキの持久力に至っては、荷馬車を引く以外に用の無い物で即放棄。
スキルを確認したが目眩がして読む気が失せた。
取り敢えず使える能力を探し出して箇条書きにしてみた。
木登り・毒無効・ジャンプ・俊敏・剛力、これに怪力無双・眼光・夜目・隠形が増えた。
そして隠形上級下の下が消え、隠形上級のみになっていた。
結果に満足して街に戻る事にしたが、ジャンプを多用して森の奥へ来たのだが、帰る途中で冒険者達が結構いるのには驚いた。
ブラウンベアを討伐していた七人組は、火魔法使いが鼻先にファイヤーボールを当てて気を逸らし、その隙に強弓を持った二人が左右から矢を射ち込む。 それも俺が持つ三人張りより遥かに頑丈な強弓で、鏃も大きく重そうで矢も太くて長い。
あんなのを射ち込まれたら熊ちゃんもイチコロだと身震いした。
もう一つのパーティーは円陣になってフォレストウルフと対峙していたが、全員短槍か剣を手にし、周囲から襲って来るウルフを危なげなく斬り捨て突き殺し、あっと言う間に群れを崩壊させてしまった。
感心していると一人が上を見上げ「こんな所で何をしている」って問いかけて来た。
枝から枝を伝って彼等の斜め上に来ていたのを、闘いながら気付いていたのにはビックリ。
「あ~、手助けが必要かなと思ったけど、必要無いね」
「それは気を使わせたな。何処のパーティーだ?」
「俺は一人だよ」
「一人、一人でこんな森の奥まで来ているの?」
ん、女の人も居たのか。
「ああ、ミーちゃんとフーちゃんが居るけどね」
「ミーちゃんとフーちゃん?」
「ファングキャットとフォレストウルフですよ。フーちゃん達は、さっきの闘いを見て怖がってます。そのフォレストウルフを見せて貰っても良いかな」
「別に良いぜ。降りて来なよ」
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