第38話 蜜絞り
(スキル)〔シンヤ、人族・19才。テイマー・能力1、アマデウスの加護・ティナの加護、生活魔法・魔力10/10、索敵中級中、気配察知中級中、隠形中級中・木登り・毒無効・キラービーの支配、ジャンプ、俊敏、剛力、ハニービーの支配〕
〔ファングキャット、4-1、夜目、俊敏〕
〔リングベア、2-1、嗅覚、穴掘り〕
嗅覚と穴掘りって、最後の数字が見えないのは能力を貰えば直ぐに解放しても、次からは弱らせずにテイムが出来る様になっているって事だな。
ティナが約束を守っているので、俺も身を守る為と趣味と実益以外に使役しないからね♪
《熊五郎、今日からこの巣を襲うことは禁止する》
《マスター、それは・・・ご馳走が》
《この巣を守ってくれたら、ご褒美をあげるよ》
《守ります! ご褒美下さい!》
《何時も此処にいる必要はない。時々此処へ来て、この巣を壊しに来る奴を追い払ってくれたらだよ》
ハニー達を呼び寄せて熊五郎を紹介、熊五郎は巣を壊さないし守ってくれると教えておく。
そして巣を壊す物を追うのを手伝い、無事に追い払ったらご褒美をあげるようにお願いする。
《ご褒美ってなにを?》
《蜜を少し上げて欲しいんだ。此れに半分位で良いよ》
マジックポーチからシェラカップ紛いの容器を取り出し、集めてもらった花蜜を容器に半分入れて地面に置く。
《熊五郎、飲んでも良いよ》
《ありがとう。マスター》
容器を抱えて零しそうになりながら必死で舐めている。
こりゃー石のように重くて硬い容器を特注しなきゃならないな。
《マスター、本当にそれは巣を壊さないのですか?》
《ママ、熊五郎にお願いしたからね。他の奴が巣を壊しに来たら追い払ってとお願いしたので、追い払ったらご褒美に花蜜を少し上げてね》
《・・・マスターの仰せに従います》
熊五郎が舐め終わった容器をしまうと悲しそうに見ているので、代わりの容器を持ってくると約束して帰らせる。
* * * * * * *
寸胴二つと、花蜜を入れた瓶とフラスコをマジックポーチに入れると、るんるんでザンドラの街へ帰る。
市場で食事を済ませると大皿を買いに出掛けるが、庶民の生活に大皿は必要無いので売ってない。
仕方がないので冒険者ギルドへ行き、土魔法使いを紹介して貰う。
呼ばれた土魔法使いは胡散臭げな顔で俺を見る。
「お前か、俺を雇いたいってのは」
「いえ、雇うのではなく大皿を二つと、ちょっと変わった容器を作って欲しいのです」
「報酬は?」
「オーク一体でどうです」
「オークだと・・・持っているのか?」
「持っていますよ。形は歪でも良いんですが、頑丈な物を作れますか。但し、気にいらなければ受け取らないし手数料は銀貨2枚ですよ」
「どんな大皿か絵を描いてくれ」
言われて大皿の絵を描くが、皿の縁を10センチ程立ち上げて一ヶ所は注ぎ口をつける。
もう一つは金属製のボールを伏せた絵にへこみを書き込む。
「確かに変わった皿と、何だこれは?」
説明すると此方の方からやってみるかと言って訓練場へ連れ出された。
何をするのかと思ったら、訓練場の砂を山のようにして固め中央を削ってへこませ、それに魔力を込めようとした。
慌てて止めてへこみの形をシェラカップの様に修正をしてから、続きをお願いする。
出来上がった物を持ち上げようとして唸っていて「駄目だ、重すぎる」と言って汗を拭う。
そりゃー、俺が指示して作らせたのは、直径80cm高さ30cm程の丸い饅頭形で中央をへこませた土の塊だもの。
変わって貰い、軽く持ち上げてマジックポーチに入れる。
「細っこいのに力が有るんだな。龍人族の血でも入っているのか?」
凄いことを言いだしたが、オークの剛力を受け取っているとは言えないので「まぁ~」と言葉を濁しておく。
大皿は地面に丸を書いてその大きさに作って貰うが、オオオニバスの葉を思い出させるが直径は50mほどだ。
歪でも良いと言うと簡単に作ってくれたので、マジックポーチに入れると彼を連れて解体場へ向かう。
「久し振りだが変わった面子だな」
「オークの一頭は彼に渡すので宜しく」
「判った。チキチキバードは捕れたか」
「三羽程持っているよ」
オークを2頭並べて好きな方を選ばせる。
査定用紙を貰って嬉しそうに出て行く土魔法使いは、楽で簡単なお仕事に満足気だ。
オーク 1頭
チキチキバード 3羽
レッドチキン 5羽
スプリントバード 3羽を並べて終わり。
「おいおい、今日はやけに少ないな」
「ちょっと遊んでいたからね」
オーク 1頭、85,000ダーラ
チキチキバード 3羽、55,000ダーラ×3=165,000ダーラ
レッドチキン 5羽、20,000ダーラ×5=100,000ダーラ
スプリントバード 3羽、35,000ダーラ×3=105,000ダーラ
合計 455,000ダーラ
査定用紙を貰ってちょっと質問。
「ハニービーの巣を見つけたんだけど、蜜って高く買って貰えるの」
「あれは専用の服がなけりゃ無理だな。それに途中で野獣に襲われたら防ぎようがないので。6、7人以上のパーティーでないと死ぬぞ。蜂蜜は貴重なので、ポーションの瓶一本分で銀貨5、6枚は堅いな。そういえば、お前はキラービーを従えていたな。キラービーに襲わせて根こそぎ取って来いよ、一財産出来るぞ」
「そりゃ駄目だ。キラービーは護衛をしてくれているが、俺の命令を聞いている訳じゃないからね」
礼を言って解体場を後にするが、ポーションの瓶一本分で銀貨5、6枚とはね。
精算カウンターで金を受け取ると薬師ギルドへ直行して、中級の下を2本と中と上を各一本買う。
420,000ダーラを支払い、ポーションを受け取ると質問。
ポーションの瓶より大きな物はどの程度の容量なのか。
出されたのは蓋付きで牛乳瓶の二回りほどの大きさの瓶で、次いでそれがすっぽり入る大きさで、此れも蓋付きだ。
牛乳瓶の容量は確か200mlだった筈で、これは推定で400mlと800ml位かな。
これ以上大きいのは梅酒を作る瓶くらいになる、小中大と言われても大のインパクトガ凄い。
しかし、薬師ギルドで使用する瓶なのだから当然か。
俺がこの間買った奴は蒸留水保存用の物だって聞いたので、それを2本と小中の瓶を各10本買っておく。
小瓶 10本×20,000ダーラ
中瓶 10本×30,000ダーラ
蒸留水保存用 2本×9,000ダーラ
59,000ダーラを支払ってマジックポーチにしまう。
「背の高い兄さんはどうした」
「彼は今、オシウス村で野獣の討伐していますよ」
「又毒を集めるのかな」
「いえ、ちょっと趣味に使いたいと思いまして」
次は雪平鍋に似た物を探しに市場に行き、鍋とそれがすっぽり入る大きな鍋を買い寸胴をもう一つ追加、目の粗い布も1m程手に入れる。
買い物が終われば街に用はない、即行で街を出てハニービーの巣の方へ向かう。
ジャンプを使えば移動は早いのだが、どうもピョンピョン跳ねるのはミーちゃんに不評だし、俺もスキップ程度の方が楽で良い。
足の速いエルクかウルフをテイムすることにした方が良さそうだ。
遠くにハニービーの巣が見える場所に野営用結界を展開し、朝から小枝を燃やしてお湯を沸かす。
その間に寸胴に詰め込んだ、蜜の詰まった巣を雪平鍋にぎっしり詰めて待つ。
時々指をお湯につけて温度を測るが、体感温度で50度なんて正直無理。
お風呂だって40度以下の温いのが好きなので、指をお湯につけて1・2・3と数えて耐えられるうちは50度以下と断定する、1・2・3であっちーと思ったら50度と認定。
火を小さくして、雪平鍋を湯につけて湯煎だ。
六角形の蜜蝋の巣に詰まった蜜がじんわりと鍋の底へと流れ出す。
それを確認して買ってきた小瓶を並べると、ビーカーと蒸留水用の容器に溜まっている花蜜を瓶に移し替えていく。
小瓶5本と中瓶1本、残りは三角フラスコに入れて保存する。
雪平鍋の中でとろけた蜜は、小瓶と大瓶に入れていくが結構残っている。
それを買ってきた空の寸胴に入れ、たっぷり蜜の残った物をザルに広げた布の上にひっくり返すと、次の巣を雪平鍋に入れて湯煎する。
残る滓を乗せた布を蜜を絞リ取り、絞り滓は土魔法使いに作って貰った大皿に乗せて行く。
一日中野営用結界の中で、湯煎と残り物を絞る作業で体中ベトベトで気持ちが悪い。
ベトベト感はクリーンでも残ったので頭からウォーターを連続して掛けて服も身体もびしょ濡れにしてから絞り、クリーンの三連発。
こういう時は神様の加護が二つなので、生活魔法も人より強いので助かる。
これでラノベのようにライトの強化版フラッシュでも使えれば面白いのだが、そうは甘くなかったからな。
着替え用に取っておいた古着を着込んで一息つく。
花蜜と蜂蜜、ラノベでは超貴重品というか高価で、争奪戦か貴族や豪商に狙われる設定だ。
現にポーションの瓶一本分の蜂蜜で、銀貨5,6枚って言っていたからな。
でも専用の装備で蜜を採取する奴等がいるのだから、そう酷い事にはならないと思うので一度は売ってみるつもり。
騒ぎにならなければ、楽して生活費稼ぐ手段になる。
夕暮れに結界の外に出て腰を伸ばしていると、離れた場所に火灯りが見える。
嫌な予感がしてミーちゃんに偵察を頼む。
帰って来たミーちゃんの報告では8人の冒険者が居て、毛皮の服が置いてあると教えてくれた。
毛皮の服を置いているのなら、ママの巣に対する蜂蜜狙いに間違いない。
熊五郎が居てくれたら任せるが、いない様なら俺が妨害させて貰おう。
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