第29話 怒りの咆哮
ビーちゃん達が飛び去ったので、シェルターからフラン達が出て来るが、レブンがへっぴり腰で笑っちゃうね。
「ブランウベアを探しに行ったのか?」
「ブラックベアを見せて探してとお願いしましたけど、どうかな。後は待つしかないですよ」
「けっ、役に立たねぇ蜂だな!」
「何かなぁ~、炎のレブン様。出発前にブラウンベア討伐の邪魔をするな、って言っていましたよね。見つかったら、炎のレブン様にお任せしますよ」
「ちょっ、炎のレブンって」
「お前、何時の間に二つ名が付いたんだ?」
「それ程の火魔法使いか? 炎のレブン、捻りのねえ名だな」
あ~あ、レブンちゃん、ファイヤーボールより真っ赤になってますがな。
「シンヤさん、スライムですよ」
「えっ・・・何処に?」
「ブラックベアの向こう。お肉の残り物を食べに来たんですよ」
「何だ、スライムが珍しいのか」
「あれを捕まえたいのですよ。フラン頼む!」
「いやいや、ストーンバレットでも手加減出来なくて、射ち抜くから駄目ですよ。シンヤさんが一発殴れば良いじゃないですか」
「またポーションを飲む羽目になったら、どうしてくれるの」
「何でスライムでポーションを飲むんだ?」
「あっと・・・えーと。この間スライムを捕まえようとしたら、反撃を受けてすっ飛ばされました」
「あれは見事な反撃でした。シンヤさんは吹っ飛ばされて二転三転して頭から血を流し、ノックアウト寸前でしたから」
フランの説明に爆笑されてしまったし、レブンちゃんも見下すように笑っていやがる。
スライムの為に用意した棒きれを取り出したが、どの程度なら殺さずに捕まえられるのかな。
「ドラドさん笑ってないで、捕まえるにはどの程度で殴れば良いのか教えて下さいよ」
「何でスライムを捕まえるんだ?」
「勿論テイムするんですよ。ホーンラビットとゴブリンで試したけど、スライムには反撃されて未だなんです」
「スライムをテイム出来るのか?」
「判りません。俺は能力1のテイマーですからね。テイマー神ティナ様の加護が有るので、キラービーが守ってくれていますが色々と試してみないとね」
「お前にはブラウンベアを探す手伝いを頼んだので、スライムくらい捕まえてやるよ」
「どら、その棒を貸しな」
「ゼブルさん、死ぬ寸前でお願いします」
「そりゃー手加減が難しいな」
「動かなくなったら、後は俺がやります」
ブラックベアをマジックバッグに戻して、その向こうでお肉の残りを食べているスライムに向かう。
軽く素振りをして手加減の調整をしてから〈フン〉の鼻息とともに〈バシーン〉と音がしてスライムが変形する。
(テイム)〔スライム・2〕
ゼブルさんから棒を受け取り、軽く一発叩き(テイム)〔スライム・2〕
今度はもっと強めに叩いて(テイム)〔スライム・1〕となったので(テイム・テイム)〔スライム・30-1〕と成功!
「テイム出来た様だな」
「有り難う御座います。最低の能力ですから大変ですよ」
「しかし、スライムなんかテイムしても、何の役にも立たないぞ」
「ホーンラビットとゴブリンをテイムした時に、少し判った事が有るんです。スライムなら何が出来るのか試したくて」
「お前はテイマーとしては能力が低いと言うが、加護だけでキラービーが従っているのは凄いと思うぞ」
「何時かはウルフを従えたいので、色々試したいのですよ」
「へっ、腰抜けテイマーがウルフとはな」
《1号から5号は、此奴の周りを飛んで脅してやって》
《任せてー、また刺してやりますか》
《マスターを馬鹿にしたな!》
俺に睨まれてにらみ返してきたが、ビーちゃん達が周囲を旋回し始めたとたんに顔色を変えた。
《一回くらい刺してもいい》
《刺しちゃ駄目だよ~》
ゲロマズの毒消しポーションでも、奴に飲ませるのは勿体ない。
俺が睨むと、ビーちゃん達が降りてきてレブンを中心に旋回を始めた。
それを見た残りのビーちゃん達が集まって来て、レブンを取り囲むようにホバリング。
スズメバチの様に顎をカチカチと鳴らして威嚇し始めたので、レブンが頭を抱えて座り込んだ。
座り込んだと言うより、足の力が抜けて腰砕け状態。
《皆有り難うね。周囲の警戒にもどって》
《はーい》
《マスターの敵は許すまじ》
《刺さなくて良いの?》
おっと、スライムを忘れる所だった。
《聞こえるかな?》
《はい、マスター》
《今日から君はスーちゃんね。スー1号だよ》
《スーちゃん、スー1号ですね》
さて、命名が済んだらスキル確認だ。
(スキル)〔シンヤ、人族・18才。テイマー・能力1、アマデウスの加護・ティナの加護、生活魔法・魔力10/10、索敵中級中、気配察知中級中、隠形中級中・木登り・毒無効・キラービーの支配〕
〔キラービー、50-50、複眼、毒無効〕
〔スライム、30-1、軟体、ジャンプ、35〕
スライムは軟体とジャンプか、ぽよぽよの身体だから軟体ってコンニャクみたいな身体は要らない。
ジャンプを選択しもう一度スキルを確認すると、〔木登り、毒無効、キラービーの支配、ジャンプ〕となっている。
色々と試してみたいが、テイム出来た事だけを教えておく。
《スーちゃんおいで、お肉を食べても良いよ》
《ありがとう、マスター》
《食べ終わったら俺の所へおいで》
《はーい》
「どうです?」
「テイム出来たよ。此れから色々と調べてみるよ」
フランにも教えられないので、ジャンプの能力確認はそのうちにだな。
* * * * * * *
お昼を少し過ぎた頃、一群のキラービーが戻ってきて《マスター、大きな毛玉を見つけたよ》と教えてくれた。
方角は《こっちなの》と言って飛び去り戻ってくる方向から北北東、だろうと思われる。
お礼のお肉を枝に置き、ビーちゃん達も混じってお食事をしてから帰っていった。
「ドラドさん、こっち北北東の方向に居るようですよ」
「距離は?」
「無茶言わないで下さいよ。キラービーは飛んでいるんですよ。俺達の足と比べられても判りません」
「そうだな。キラービーが何処まで飛んでいったのか知らないが、取り敢えず行くか」
出発の合図で歩き出したが、スライムは遅れず俺の横をピョンピョン跳んでついてくる。
此奴を抱えて歩くのかと迷ったが《付いて行きます!》の一言で連れて行く事にしたが、スライムの能力にジャンプが有ったのを忘れていた。
あの時のボディーアタックも強烈だったし。
《スーちゃん、上にどれ位飛び上がれるの》
《ん~》プルプルと震えたと思ったらいきなり跳び上がったが、推定高度・・・フランの3.5倍程度だ。
《此れくらいです。マスター》
フランの身長が・・・180cmとして3.5倍跳べば6.3mって事になる。
すーちゃんの推定直径が30cm強として、身長?の20倍くらい跳び上がった事になる。
垂直跳びて20倍なら、前方では30から40倍は跳べると思われる。
スーちゃんのボディーアタックが強烈な筈だ。
クーちゃんの木登りも、フランの手前本気のものは試してないが気楽に登れる。
スーちゃんのジャンプも、使いようによっては強力な武器になりそうだ。
後ろの方から〈スライムってあんなに跳べるんだ〉と、ビックリした声が聞こえてくる。
* * * * * * *
北北東に進み始めて三日目の朝、ビーちゃん達に扇形に広がる様に偵察をお願いして出発。
嫌がらせ以来、俺の後ろに回されたレブンのぶつくさ声を聞きながら歩く。
あれからビッグホーンと呼ばれる牛一頭にエルクを三頭討伐したが、どうやら本命に出会ったようだ。
《マスター、もう少し行くと毛玉が居るよ》
《大きいよ~》
《有り難う。危なくなったら助けてね》
《任せなさーい》
《でも、毛玉に針は届かないよ》
《鼻も硬いし・・・》
あらっ、ちょっと弱気になってるな。
さて、斥候のヤンスが何時気付くかな。
呑気に考えていたが進路脇にある藪から嫌な気配がするが、斥候のヤンスは気付いていない。
もう距離にして50mもない。
「フラン前方右の藪から、嫌な気配がするぞ!」
俺の警告と同時に、藪を飛び出した巨体が駆け寄って来る。
「フラン、シールドを立てろ!」
ビックリして硬直していたフランが慌ててシールドを立てるが、突進してくる巨体は軽く躱して迫ってくる。
「ストーンランスを射て!」
俺の指示に従おうとしているが、遮蔽物も無くブラウンベアの奇襲を受けて動きが鈍い。
《スーちゃん、奴の鼻に突進しろ!》
《はい、マスター》
皆槍や剣を構えているが相手が大きすぎて戸惑っている。
フランがやられたら全滅だ。
マジックポーチから短槍を取り出す間に、スーちゃんの体当たりを鼻に受けて怒りの咆哮をあげるブラウンベア。
すーちゃんから貰った能力、ジャンプをいきなり試す羽目になるとはついてない。
立ち上がり怒りの咆哮を上げるブラウンベアに向かい、短槍を構えると奴の喉を狙って軽く助走してジャンプ。
練習不足が諸に出て、喉の少し下に体当たりのようにぶつかり地面に落ちた。
短槍はブラウンベアの胸に残り、奴はそれを掻き毟って抜こうとしている。
「フラン! 射て! 射て!」
俺の声にドラドがフランの背中を叩き〈射て!〉と、どやしつける。
次の瞬間、フランの掌から飛び出したストーンランスが胸に吸い込まれる。
連続して五本のストーンランスが後を追い、次々と胸に突き立った。
(テイム)〔ブラウンベア・46・・・〕
(テイム)〔ブラウンベア・23・・・〕
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます