第12話 ラノベの知識
大量捕獲したキラービーをテイムする為にフランを呼び出し、穴から一匹ずつ出すので叩き落として貰う。
地面に落ちたキラービーを(テイム)〔キラービー・2〕と出れば、再度叩いて1にし(テイム)〔キラービー・1〕になれば(テイム・テイム)〔キラービー・50-14〕
《君はビーちゃん14号ね。1号達の所へ行って待ってて》〔キラービー・50-14、複眼、毒無効、28〕
《はい、マスター》
延々と叩いてはテイム出来るか確認し、テイム出来ると番号を割り当てる作業が続きウンザリしたが、何とか50番までテイムが終わり確認だ。
掌を見て(スキル)〔シンヤ、人族・18才。テイマー・能力1、アマデウスの加護・ティナの加護、生活魔法・魔力10/10、索敵初級、気配察知初級、隠形初級・木登り・毒無効・キラービーの支配〕
〔ポイズンスパイダー・5-1、複眼・木登り、27〕
〔キラービー・50-50、複眼・毒無効、支配、28〕
ん、キラービーに複眼と毒無効の他に、支配が付いている。
それにスキルの項目には、木登りと毒無効にキラービーの支配が追加されている。
これって50-50でカンストしたご褒美かな、でも支配といってもテイムしているので支配しているんだけど、何を意味するのかな。
クーちゃんの数字が27に減っているって事は、テイムしている日数かクーちゃんの寿命か不明だが、一日遅れでビーちゃんの数字も減っている。
この辺は数字が0になるのを待つしかなさそうだ。
《マスター、マスターお肉を捕まえました!》
忙しくて忘れていたのでフランに頼み、ホーンラビットの所へビーちゃんに案内させて解体して貰う。
フランも要領が判ったのか、解体したお肉を細切りにして木の枝に掛ける。
《マスター、食べていいですか♪》
《どうぞー、お疲れさん》
一切れ貰ってクーちゃんの所へ運び、ビーちゃん達から見えない所でお食事をさせる。
天敵の大群を見てクーちゃんはすっかりビビってしまい、植木鉢紛いの巣から出ようとしない。
お食事が終わったら、残りのキラービーを解放して帰らせることにした。
俺達を襲わないように、ビーちゃん達にお願いしてから土管に蔓を巻き付けて遠くから引っ張る。
土管が倒れると残っていた蜂たちが一斉に舞い上がり、鈍い羽音が飛び交い背中がゾクゾクする。
乱舞するキラービーの羽音は鳥肌が立つってもんじゃない。
思わず来るなよ! さっさと巣に帰れと願うと《帰ります。マスター》と、大合唱が頭に響く。
思わず〈エッ〉と声が出て見上げれば、乱舞していたキラービーが土管の周囲を旋回しながら集合して帰って行くではないか。
支配って・・・カンストした種族を、テイムしていなくても使役出来るって事なのか?
「いやー、迫力有りましたねぇ。あれに襲われたらと思うと震えが出ましたよ」
このー、人がテイムと加護について考えているのに、脳天気に話しかけて来る空気を読まない奴。
だけど、これで強力な武器が手に入った。
ミーナとハンナ婆さんを、街に帰す事が楽になりそうだ。
「フラン、あの二人を街まで送るのだが、ザンドラには連れて行けないのでどうするかだ」
「ハンナお婆さんと相談してみたらどうです。色々と知っていそうだし」
「だな。ホルムの街が何処だか知らないが、ザンドラの近くで役人に渡すのはなぁ」
* * * * * * *
捕らえた三人に話を聞かれたくないので、彼等を土魔法のシェルターで包んでとフランに頼む。
「ザンドラの冒険者ギルドのギルマスが、盗賊団のボスだと言われるのですか」
「ザンドラの近くで俺達は襲われたのだが、返り討ちにして尋問した時にそう聞いた。その時に11人、このアジトの外で5人に襲われた。こいつ等3人を含めると19人だぞ。冒険者や冒険者崩れの破落戸な奴等ばかりだったので、強ち嘘とも思えない。そうなると、あんた達を近くの街へ送る訳にはいかない。少なくともザンドラの在る領地以外の場所で、役人に引き渡す事になる」
「その事ですが、街へ行った者が6人と言いましたが、それはお嬢様の身代金を要求する書状を送る為です。ザンドラの街を出て半日以上経った時に襲われたのですが、店の護衛も雇った冒険者も皆殺されてしまいました。彼等の話からお嬢様を狙った様で、私が乳母だと知っていて殺されずにお嬢様の世話を命じられました」
「なんで小さな子供一人を旅に出したんだ?」
「ザンドラの南にカンタスの町が御座います。ミーナお嬢様の曾祖母様の、病気見舞いの帰りなのです。それで町へ向かった6人ですが、ザンドラで書状を送ると目立って不味いので、隣の領都へ行くと言っていました」
「隣の領都?」
「クルークス領エムデンです! その北の領地がエルザート領でホルムの街が在るのです。因みにザンドラの街からエムデンまで馬車で3日、そこからホルムの街まで馬車で4日掛かります」
「で、ハンナさんは何が言いたいの」
「貴方の話ではザンドラへ行くのは危険だと思われますし、エムデンも彼等の仲間が居ないとは限りません。私達をホルム迄送って貰えませんか」
「そりゃー無茶だ。俺達はつい先日冒険者登録したばかりの、Gランク冒険者だぞ。俺達二人と、あんたとお嬢さんの四人で街道を行けばどうなると思う」
「でも貴方達は、二人で20名近い賊を捕らえたのでしょう」
「それね、生け捕りはその中の三人だけだよ。後は蜂たちが俺達を助けてくれたのさ。あの三人だって蜂のお陰だな」
「貴方はテイマーで、蜂を従えているのでしょう」
「昨日の蜂でも10匹以上いたんだよ。テイマーがどの程度の事が出来るのか知らないが、俺は能力最低の1だ。そんな数を従えるなんて無理!」
「でも貴方の周りに蜂が集まり、貴方に従っているように見えますよ」
「それはね、俺が加護持ちだからなんだよ。テイマーの神様が助けてくれてるんじゃないのかな」
スッ惚けているのに、フランが微妙な顔で俺を見つめているので、余計な事は喋るなと睨んでおく。
「でも貴方達のお話ではザンドラには帰れない、エムデンに行っても身代金を要求する書状を持っていった者が、私たちと出会ったり貴方達の事を知っていたら、ギルマスとやらに知られるわよ」
言われてみれば確かにそうなので、思わずフランと顔を見合わせてしまった。
ここで迂闊に動き回ったらドジを踏む、どうすべきか。
ハンナ婆さんの言うとおりホルムとやらに向かうとしても、5才の子供と老女を連れては無理だ。
「修行の為に、町に出てきたのは失敗だったかな。どうするシンヤさん」
「フランの村はザンドラに近いって言ってたな」
「歩いて2日程の距離ですが・・・」
「ですが、なんだ?」
「オシウス村ってザンドラの東にあるんですよ。野獣も多くて討伐の為に冒険者を時々呼ぶんです」
「やれやれ、お前の村に行っても安全とは言えないってことか」
あのアマデウスって野郎の言葉から、碌でもない世界と思っていたが想像以上に厳しそうだ。
あいつの口振りと気楽に放り出す性格から、多くの者を強制的に召喚して死なせているんだろうな。
俺は使い捨てにされてホイホイ死ぬ気は無いので、何としても生き延びてやる。
「ここに居てもどうにもならないので移動するが、あの三人をどうする?」
「逃がす訳にはいかないので、クーちゃんにお願いしましょう」
「だな、何時までも此処に居るのは危険なので、離れた所で今後の事を考えよう」
* * * * * * *
ハンナ婆さんには俺のズボンを履かせて歩いてもらい、ミーナは背負子に座らせて交代で背負うことにした。
街道を歩くのは危険なのでホルムの在る北へ向かうが、街道から外れないように少し東寄りに歩く事にした。
斥候をビーちゃん達に頼み、歩きやすい所を選んで歩いたが4日目にはハンナが音を上げた。
老女でお嬢様の乳母に森を歩かせるのは酷だと判っているので、これ以上無理はさせられない。
足の怪我はポーションを飲めと言ったが、これはお嬢様の為にと言って飲まない。
そうなると、二人を此処へ置いて俺達だけでホルムまで行かねばならない。
しかし二人の安全が問題なのだが、こんな時にこそラノベの知識を総動員だ。
フランに、戻ってきた時に判り易い場所に目立たないシェルターを作る適地を探させる。
地面を平らにならしてシェルターを作る準備をすると、此処からはラノベの知識が役立つかお試しだ。
「フラン、狩りをする時の武器を作ってくれ」
「武器って?」
「土魔法を使ってだよ。この前『獣と闘う事も出来ます』と言ってたじゃないか」
「ストーンアローですか。そんな物をどうするんですか?」
「いいから作りなよ。もしかしたら強靱なシェルターを作れるかもしれないから」
〈大地に願いてその力を借り、我が敵を射ち倒す矢となれ・・・ハッ〉
長さ60cm程の土の矢が出来たので受け取りへし折ると、多少手応えはあるが細枝を折るようにポッキリ折れた。
「もう一本だ」
不満げなフランに、訳は後で話すと言って作らせる。
「これに魔力を込めて硬く出来るか?」
「ええ~ぇぇ。そんな事が出来るんですか?」
「出来ると思うよ。俺の育った所では、魔法はその願いを叶える物だと言われていたからな。フランもシェルターやストーンアローを作れるのなら、出来る筈だよ。騙されたと思って、この矢が硬くなれと願って魔力を出してみな。出来れば魔法使いとして一段高みに上がれるぞ」
ラノベの受け売りだが、出来たら儲けものだし攻撃力も上がるってものだ。
真剣に何やら考えていたが〈大地に願いてその力を借り、我の敵を射ち倒す矢となれ・・・ハッ〉
矢を作ると、それを睨みながら〈創造神アマデウス様の力をお借りし、これを硬くせん・・・ハッ〉
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