第17話 好きバレ

 雨音と帰った次の日。

 時雨は隣の時音より早く登校していた。


 雨音さんともっと仲良くなるために、彼女の周りの人間とも仲良くしないとな。

 昨日、遊ぶ約束はしたけどもし俺が時音さんと仲が悪くなったりでもしたら、それがパーになるかもしれない。

 まずは挨拶、好印象を持たれることが大事。


 考え事をしているうちに、時音が登校してきた。

 茶色い長髪をなびかせて、蝶の髪飾りをつけている。

 彼女はまっすぐ時雨の席の隣に向かってくる。


 「おはよー!」

 

 彼女が笑顔であいさつをしてきた。

 その顔はとても明るく、さっきまで不安を一瞬で消し去っていく。


 「おはよう」


 「時雨君来るの早いねー!なにかあったの?」


 「いや、まあ早く起きただけ」


 「へえ!あたしには無理だなー!」


 笑いながらそのようなことをいう。

 

 彼女のこの性格なら仲が悪くなるほうが難しいんじゃないか?

 これなら遊びに行く予定も平気だろう。


 その後も時音と他愛のない話を続けていると雨音がこちらの席にやってくる。


 「おはよー二人とも」


 「「おはよー」」


 雨音さん、初めて教室で話しかけられたかも。

 すげえ嬉しい。


 「雨音、時雨君と仲良かったの?」


 時音は時雨と雨音がクラスで一度も話したことがなかったので疑問に思った。


 「うん。仲いいよ」


 え、俺雨音さんに仲いい判定されてる!?

 今年一番うれしいかもしれない。


 「そうそう。昨日時雨君と今度遊び行きたいねって話したの」

 

 雨音が昨日の出来事を時音に話した。


 「へえー!ふーん」


 時音がこちらをじろりとみる。

 何かいいたげ様子だった。


 あ、絶対ばれたな。

 どうしようばらされたら。


 「それで時音も一緒に行こうよ」


 「え!?私も!?」


 まさか自分も誘われると思っていなかったのか、かなり驚いている様子だった。


 「うん。みんなで行こってなって」


 「あー、そゆことか」


 いろいろ察しがよく、時音は状況を理解する。


 「いいよ。それで、3人で行くの?」


 「あと、悠一君も誘おうって」


 「あ、悠一もくるんだ」


 「時音さん、悠一と仲いいの?」


 「まあ高1から一緒だし」


 「そうなんだ」


 それはそれで好都合かもな。

 気まずくならずに済むし、一度きりの関係になる可能性も低い。


 3人で会話をしているとチャイムが鳴る。

 

 「あ、じゃあ席戻るね」


 雨音が席に戻っていく。

 すると時音が時雨のほうを向く。


 「時雨君、雨音のこと好きでしょ」


 「うっ」


 やっぱりばれてた。

 まあそりゃそうか。


 「別に隠さなくていいよ、言ったりしないし」


 「助かるよ、ありがとう」


 けどやっぱ恥ずかしい!


 「雨音を遊びに誘うなんてやるじゃん、あの子結構ガードかたいし。今まで恋愛してるとこ見たことないし」


 「道は険しいな」


 「まあ遊びに行けるだけ結構進展してると思うよ」


 「それは確かに」


 この人いい人だな。

 一緒にいると元気づけられる。


 「まあみんなでって言うのは惜しいけど」


 「うるさいなー。仕方ないだろー」


 その返しに笑う時音と、恥ずかしそうにする時雨。


 ◇


 昼休み。

 今日は珍しく外で悠一と昼食をとっていた。


 「え、雨音さんと遊び行く約束できた!?」


 「声大きいよ」


 念のため教室じゃなく外にしたのは正解だった。

 これをクラスのやつに聞かれたらと思うと。


 「やるなお前、まあみんなでってところはあれだけど」


 「それ、朝時音さんにも言われた・・・」


 同じことを言われ、少しへこむ時雨。

 

 「あと時音さんに雨音さんが好きだってばれた」


 「まああいつ察しいいしな、でも逆にばれたほうが雨音さんのこと知れるんじゃないか?結構協力してくれると思うぞ」


 「まあそうかもね。悠一は時音さんと高1から一緒なんだっけ」


 「そうだよ、女子の中だと結構仲いい。当日も俺らでお前と雨音さん二人にさせてやるよ」


 「助かるよ」


 俺の周りには、いい人が多い。

 頼ってばっかりだな、いつか恩返しできれば。


 「そんでいつにするんだ?」


 「決めてないけど、たぶん週末」


 「わかった」


 そして時は流れ、週末。

 その日がやってくる。

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