第12話 体育祭
音楽がグラウンドに鳴り響く。
体育祭午前の部。
今は二人三脚をしていた。
「がんばれー!」
「いけー!」
と、歓声がそこら中から聞こえてくる。
時雨と悠一もその声に混ざり、自分のクラスを応援していた。
今、時雨達のクラスは2位、1位とはさほど差は空いていない。
「おい時雨!雨音さん来たぞ」
「うん」
雨音さんの順番が回ってくる。
はたから見ても頑張ってるのが伝わる。
そして、1位のクラスを抜いた。
「おーーーーーー!いいぞ!このまま1位いけるって!」
「うん」
頑張っていた雨音さんに対して、時雨は胸打ちひしがれていた。
本当に1位とるなんて。
すごいな雨音さん。
俺も頑張んなきゃな。
そして二人三脚は時雨達のクラスが1位となり、幕を閉じる。
「いやー、熱かったな」
「そうだね」
「俺が出てる障害物競走で1位獲れてたら二冠だったのにな」
「まあ2位でも十分すごいじゃん」
悠一の出ていた障害物競走は2位で終わっていた。
だがその障害物競走もかなりの接戦だった。
悠一たちが走っているとき、前の人が悠一たちの進路を妨害してしまっていたのだ。
もちろんそれは故意にやったことではなく、気づいていなかったらしい。
それがなければ悠一たちは勝っていただろう。
そして雨音たちが帰ってくる。
「すごいよ!おめでとう!」
「雨音さんたちすごかった!1位ぬかしたときほんとに盛り上がったんだよ!」
と、賞賛の声でその場が満たされた。
時雨は雨音におめでとうの一言を言いたかったが、周りの人の目が気になり、言えずに終わった。
そして次の種目、大縄跳びで3位の結果を持ち帰り、時雨達は昼食をとっていた。
「お前、雨音さんにおめでとうとか言ってあげた?」
「言えないって、みんないたし。話すタイミングないし」
「嫌われんぞー。ちゃんと約束して1位獲ったのに、一言も何も言われないんだから」
「うっ・・・。わかってる、後でいうよ。今いないし」
教室で昼食をとりながら二人は会話をしていた。
雨音さんの姿はないので外で食べてるんだろうと時雨は考えた。
「あとでって、体育祭終わったら?」
「うん。だってそのほうが、お互い祝えるじゃん」
「おーもう1位獲った気とは、流石だな」
「まあこれくらいの気持ちじゃないと1位獲れないかなって」
「まあ気持ちは大事だよな」
リレーは午後の部、ダンスが終わった後に行われる。
体育祭もいよいよ大詰めに差し掛かっていた。
得点がつく残る種目は個人リレーと選抜リレーだけだった。
「けどさ、お前足大丈夫なのか?」
「・・・。まあ午前にやった綱引きがちょっと響いてる」
「それで1位獲れるのか?」
「正直なとこかなりきつい」
「・・・」
「みんなにばれないようにしっぷとかも何もつけてないし、今も立つだけで痛みが襲ってくる」
「大丈夫かよ」
「まあ、本番になったらアドレナリンとかでるし、走ってるときは痛み感じないでしょ。まあそのあとの痛みはわからんけど」
悠一が心配そうな表情になっていた。
「グラウンドまで肩貸すか?」
「いや、いいよ。それだとばれるかもだし」
「そっか」
「・・・そろそろ行くか」
「うん」
足の痛みが最小限になるよう、ゆっくりと立ち上がる。
痛みをこらえて、グラウンドに出る。
そのとき雨音の姿を目にとらえる。
「おい、雨音さんいるぞ。しかも今一人だ、行ってくれば?」
「いや、いいよ。言ったろ、おめでとうは、1位獲ってから言うって」
「そうだったな」
二人で笑顔になりながら歩く。
くさいセリフに二人とも耐えられなかったのだ。
雨音がこちらを見ていたような気がしたが時雨は自分の場所へと戻っていく。
そして、午後の部のダンスが終わり、いよいよ勝負の時が来る。
「じゃあ、行ってくる」
「うん!頑張れよ!」
悠一とそのような会話をして入場門へと歩いていく。
一瞬雨音さんと目が合ったが、すぐさま目をそらし歩いていく。
いよいよだ。
俺のためにも応援してくれた悠一のためにも、雨音さんのためにも絶対に負けられない。
必ず勝つ。
時雨は足の痛みを抑えながら入場していく。
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