第7話 種目決め

 昨日の夜。


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 「テストお疲れ様!TOP50に入ってたね!おめでとう!」


 うおおお。

 雨音さん俺の名前見つけてくれたのか。

 てかあっちからメール来たの初めてだな、めっちゃうれしい。

 えっと、なんて返そう。


 「ありがとう!順位載ったの今回が初めてだった!雨音さんは3位だったよね!すごいねおめでとう!」


 「ありがとう。そうなんだ!今回今までより勉強したの?」


 「うん。今回は絶対順位入りたかったから」


 「すごいね。それで実行できる人なんて、そういないよ」


 雨音さんに褒められた、嬉しすぎる。

 けどどうしよう、このままだとまたすぐ会話終わっちゃうな。

 何か話題。


 時雨は何かないかと部屋を見渡す。

 そんなとき一枚の紙に目を向ける。

 学校のスケジュール表だ。


 6月 体育祭


 そうか、もうすぐ体育祭か。

 確か雨音さんって実行委員だったよな・・・。

 それなら・・・。


 「ありがとう!そういえばもうすぐ体育祭だけど、雨音さんってどんな種目やるのか知ってたりするの?」


 よし、いい話題転換だ。

 

 「うん。知ってるよー。明日帰りのホームルームで何やるか言うよ!」


 「そうなんだ。先に何やるか教えてよw」


 どうだ、初めてwを使ってみた。

 けど送った瞬間送ったこと後悔。

 こういうのって遅れて恥ずかしさが来るな。


 「ごめんー。種目書いてある紙学校なんだ・・・」


 あ、心が・・・。

 胸が締め付けられつらくなる。

 

 するともう一件、メールが来る。


 「明日学校でなら見せれるよ!」


 その一文に希望を見た。


 これってチャンスなんじゃないか。

 明日学校で話すとき、彼氏のことも聞ける。

 けどそれって二人きりじゃないとちょっときついな。

 ここはいくしかない。


 「ほんと!けど雨音さんっていつも誰かといるから話しかけれないかもw」


 「じゃあ朝早く来てくれれば見せるよ!」


 「ほんと!?じゃあ明日8時くらいに行くね!」


 「わかった!」


 やった!

 勇気出してよかった!

 やばい楽しみすぎる、久しぶりに雨音さんと話せるぞ。

 そうときまれば寝坊しないように早く寝よ!


 時雨はその日あまり寝付けなかった。


 ◇

 

 そして朝になり教室に入る。

 

 「おはよう雨音さん」


 「あ、おはよう時雨君。これ昨日言ってた紙」


 時雨は雨音さんの席のほうに歩み寄りその紙に目を通す。


 「へえ、これが体育祭の種目か」


 そこには体育祭の種目とスケジュールが書かれていた。

 全体の種目では、ダンスや大縄跳び、綱引き、リレーがあった。

 リレーは選抜と個人があり、選抜は推薦、個人は立候補制となっている。

 個人はバトンをつなぐ形ではなく、一人一人に順位が付き、その順位で組のポイントが配分される。

 人数の関係上、立候補できる種目はほとんどの人が一種目だ。

 立候補制の種目は、リレー、二人三脚、障害物競走だ。

 

 俺、足は遅くも早くもないから、工夫や技術で勝負できる二人三脚か障害物競走かな。


 「うーん。雨音さんはなんの種目にするか決めた?」

 

 「うん。私は二人三脚。友達がやろうって」


 「お、じゃあめっちゃ応援するわ」


 てことは二人三脚選べば練習の時も話せるかも!


 「ありがとう。時雨君は何にしようとしてるの?」


 「迷うとこだけど、悠一誘って二人三脚かな」


 けど聞かなきゃお前はずっとその他大勢のままだぞ。

 悠一の言葉が頭をよぎる。

 本当に二人三脚でいいのか。

 ここはかっこいいところを魅せる最大のチャンスなんじゃ。

 二人三脚と障害物競走はみんなで繋いで勝利を獲る種目、けどリレーは唯一個人で組に貢献できる種目。

 

 「そっか!じゃあ一緒だね!頑張ろ!」


 「・・・。雨音さん、やっぱ俺リレーにするわ」


 「え?」


 「絶対に1位獲ってみせる。だから、雨音さんに応援してほしい」


 こんなのほぼ好きって言ってるようなものだ。

 まだ彼氏いるかも聞いてないのに。

 けど言ってしまったものは取り消せない。

 

 「うん!頑張って!」


 「ありがとう!」


 一位を獲れたら聞こう、軽く聞くんじゃなく、しっかりと。

 

 ◇


 「それじゃあリレー出たいやつ前に名前書きに来て」


 先生の声を聞き立ち上がる。

 少し周りの目線がこちらに向く。

 地味で今まで存在感のなかった男が前に出て名前を書く。


 時雨、と。

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