第5話 中間テスト

 日が沈み、再び雨音さんにメールを送る。


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 「ちょっと勉強でわかんないとこあるんだけど聞いてもいいかな?」


 10分ほど考えた文章を送る。

 無視されることを覚悟で送ったが、思いのほかすぐに返事が返ってくる。


 「全然いいよー!なんの科目かな?」


 メールを確認しひとまず安堵する。

 そして教えてもらえるということで、徐々に気分が上がっていく。


 しかし科目か、やばい考えてなかった。

 まあ無難に数学かな?

 暗記系教えてもらってもあれだし。


 「ほんと!?ありがとう!数学教えてもらいたい!」


 「数学ね!わかった!問題送ってもらえばいつでも教えるよー」


 通話は流石にか。

 少し期待しすぎた。


 「わかった!じゃあわかんないとこ送るね」


 

 やばい、テスト勉強なんて全くしてないからわかんないとこもわかんない。

 とりあえず適当に難しそうな問題送ろう。


 そうして時雨は問題集を開き適当な問題を送った。

 すると10分もしないうちに回答と解説が書かれた写真が送られてきた。

 その写真に写っている字はとてもきれいで、惚れ惚れした。


 「こんな感じだと思う!間違ってたり字読めなかったりしたらごめん!」


 「全然読めるし、答えもあってる!すごいわかりやすいよ!ありがとう」


 「よかった!またわかんないところあったら言ってね!」


 「ありがとう。本当に助かる」


 「うん。学校とかでも全然聞いてね!」

 

 彼女のやさしさに心をつかまれていた。


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 こんなの、恋しないほうがおかしいよ。

 本当にずるいよ、雨音さんは。

 はあ、ますます好きになっちゃった。


 またもや胸が締め付けられる。

 彼女への気持ちがどんどん大きくなっていく。 


 でも学校で聞くってハードル高いよ。

 しばらくはメールでだな。

 せめて席が近ければいいんだけど。

 そんなこと思ってても仕方ない。

 勉強してTOP50に入るんだ。


 時雨はスマホを置いて参考書に向き合う。

 今までテストは適当に流してきた時雨。

 だが今回は、本気で点を取りに行くことを決意した。


 ◇


 朝7時。

 テスト当日。


 昨日は緊張してよく眠れなかった。

 けど、この2日間のために2週間勉強したんだ。

 絶対結果出すぞ。

 

 朝ご飯を食べ、いつもより早く家を出る。

 学校に着くとそれなりに人はいてみんな勉強をしていた。

 時雨は席について座ると、1限目の歴史の復習を始めた。

 悠一も合流し、お互いに問題を出し合っていた。


 「お前めっちゃ覚えてんじゃん」


 「頑張った」


 「やるね。やっぱ恋の力は偉大だね」


 「うるさい」


 「んで、雨音さんとはどうよ」


 「別に、なん箇所かわかんないとこ聞いただけ」


 「電話とかしたか?」


 「してない」


 「えーすればよかったのに」

 

 「向こうも勉強忙しいだろうし。迷惑かけたくないんだ」


 「お前なあ・・・」


 頭をかき何か言いたげな表情をする悠一。

 そんな表情を見て時雨はある決意を口にする。


 「だから、このテストでTOP50取れたら、電話とか、遊びとか誘ってみようと思うんだ」


 「えっ!」


 「いつまでも逃げてるわけにはいかない。ちょうどいい口実というか、理由だろ?」


 「おおー!いうなお前!成長した」


 「なんで上から目線なんだよ」


 「頑張れよ!マジで応援してる!」


 「お、おう。ありがとう」


 チャイムが鳴り先生が入ってくる。

 ついにテストが始まる。



 チャイムが鳴り2日目、最後のテストが終わる。


 十分な手ごたえ。

 これならいける。


 「どうだった?全体的に」


 悠一が話しかけてきた。


 「かなりいけたよ」


 「うお!まじか!やったな」


 「うん」


 「あとは結果待つだけだな!」


 「TOP50がわかるのっていつだっけ」


 「確か、2週間後だな。来週全教科返ってくるし」


 「楽しみだ。じゃあ帰るか」


 「おけ。荷物取ってくるわ」


 そう言って悠一は自分の席へ戻る。

 時雨も荷物をバックの中に入れた。

 帰る準備をしていると横から話しかけられた。


 「ねえねえ。時雨君テストどうだった?」


 雨音さんが声をかけてきた。

 いきなりのことで心臓が飛び出るかと思った。


 「え。あぁ。まあまあできたよ」


 「数学のテスト、力になれたかな?」


 「うん。すごい助かったよ!本当にありがとう」


 「よかったー!」


 心臓の音が・・・。

 恥ずかしくて目が合わせれない。


 「それじゃ!また明日!ばいばい」


 彼女が帰ってしまう。

 夢のひと時が終わる。

 本当にこのまま終わっていいのかな。


 「うん・・・。じゃあね」


 勇気が出なかった。

 チャンスを棒に振ってしまった。

 人間はそう簡単には変われないんだな。

 けどTOP50入りしたら今度こそ・・・。


 そして2週間後、TOP50が掲示板に貼り出された。

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