青天の霹靂と変わっていく日常②

 しばらく入院生活を余儀なくされ、退院してもいつまたあの痛みが襲ってくるだろうとビクビクしていました。

 当然そんな状態で働ける訳もましてや舞台に立てる訳もありません。

 色々な関係者に電話で頭を下げ回り、一緒に舞台をやると約束した女にも確か泣きながら謝ったと思います。


 その数ヶ月後に本番だけ見に行ったのですが、あの時の感情は筆舌に尽くし難いですね。

 家に帰ってから自分でも引くほど泣きました。

 あの時はなぜ泣いているのか自分でもわかりませんでしたが、今なら悔しかったのだろうなと理解ができます。

 悔しくて情けなくて羨ましくて不甲斐なくて、当時の私はそんな感情に振り回されて大泣きしておりました。確か夜通し泣いていたと思います。若いですね。

 それくらい一生懸命だったのだと思います。


 さて、そうして再び実家にて療養して一年位たった頃でしょうか。

 体調も落ち着いて働き始めました。動いてみれば意外にも働けるもので週五フルタイムで働いていました。

「あ、なんだ私普通じゃん」

 そう思いました。


 そして私は家族(めちゃくちゃ頼りになる義理の姉)にとんでもないほど背中を押され上京する事にいたしました。

 ここに来てなぜ上京⁉︎ そう思われる方も少なくないかもしれません。

 ただ何度か書いてある通り私は劇団員で、表現の世界に強い憧れがありました。元々上京するつもりだったのですが病気になったりなんだりとタイミングを逃していたところ義理の姉に言われたのです。


「あたしが背中を押さないとお前は一生この田舎に閉じこもる。押してやるから行って来い」


 とんでもねえ男前な義理の姉でございます。

 私はこの姉が大好きで、そしてこの姉が言うように私は引きこもりがちでした。けれど憧れが捨てきれずにぐずぐずしている私を見兼ねて姉が喝を入れてくれました。

 こうして私は花の東京へと旅立ったのですが、ここからが本当に目まぐるしい日々でした。

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