青天の霹靂と変わっていく日常①

【クローン病】

 クローン病とは小腸や大腸などの粘膜に、慢性的な炎症を引き起こす病気のことです。発症の原因は未だよくわかっていないらしい。

 指定難病96と書かれている病気になった私ですが、何年付き合っていても未だにこいつのことがよくわかっていません。気まぐれな病気なのですこいつは。


 さてそんなクローン病だと診断され私は無事退院したのですが、その三日後くらいに異変が起こったのです。


 その頃すでに私の腹の傷は塞がっていました。人体の神秘。

 けれどもその傷口がどんどん腫れてくるのです。熱を持って、まるでそこで何かが生まれているような、別の生命がいるような、そんな腫れ方をしていました。

 そしてそんな腫れ方が痛くないはずもなく、私は激痛に悩まされることになります。


 ここで病院に行けばよかったのに私は耐えていたらいつか治るという選択をしました。馬鹿だと思います。

 もちろん痛みは引くどころか強くなる一方で、終いには立つこともままならなくなりました。そして病院に担ぎ込まれ、退院から約一週間で再び私は病院の住人となったのです。


 私はその時人生で初めて、自分の腹から膿が流れてくるのを見ました。

 血と一緒に黄土色のものが流れてベッドに落ちた時、何事かと腹を撫でて指先にそれが付着した時「あれ、思ったより大変なことになっているかもしれない」と初めて実感したのです。


 思えばあれが心が折れるという状態だったのかもしれません。

 それから数年の人生で全く違った状況で全く同じ感情を味わうのですが、それはまた何かの機会がありましたら。


 とにかく私はその時「無理かも」と思ったのです。

 突然思いました。先生から病名を宣告された時も一生病院通いで薬を飲み続けなければならないと言われた時も、私は特に何も感じていなかったのに。

 強いていえば「めんどくせえ」くらいにしか思っていなかったのに。


 耐え難い痛みとおよそ信じられない光景を目にして初めて自分が「一生治らない病気を持っている人」だと実感したのです。


 その日から私の無気力な日々が始まりました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る