第52話

次の日起きて俺は自分状況見て、入院してくと思い出した。これで合法的に学校休めてラッキーだが、野球をできないから鈍んないか怖い。これでも一応ベンチ入りメンバーだから投げる可能性はあるしな。エースは向井先輩だからそこまでやんなきゃヤバイっていうくらいの焦りはないが。だけど感覚を忘れるのはまずい。今は握力をアップするトレーニングだけしておくか。握力が上がれば変化球の精度も上がるし。特にスプリットは重要だ。


そんなことを考えながらお腹減ったなぁーと思っていると、扉コンコンと叩かれた。


「どうぞー」


「失礼するよー。倉橋くん朝食を持ってきたよ」


病院食はあまり美味しくないと言われているが本当なのか。健康を重視に考えているから味がうすいと言われているな。ラーメンが恋しくなりそうだな。俺は基本的に味が濃いやつが好きだし。それに量も見た感じ足らなそうだ。奏に買ってきてもらうか。おにぎりと豚汁を。


「ありがとうございます。看護婦さんいつ退院できるか分かりますか?」


「二週間くらいかな?」


テストまでに間に合いそうに無さそうだな。その場合受けるときをずらすと、内容を教えてもらって、高得点が取れてしまうから、病院内でテストだろうな。多分監視用の先生が来てな。長時間病院にいなきゃいけないから先生はきついだろうな。テストは基本一日に一回しか監視しなくていいし。


「そうですか、運動はどのくらいでできますか?」


「一ヶ月だね。傷口が開く可能性があるからね。でもギリギリ夏の大会には間に合うよ」


よかった。夏大会には間に合うんだな。少しでも先輩方の最後の夏の大会に貢献したかったらよかった。もしかしたら甲子園に行ける最後の夏かもしれないからな。それだけこの世代は強い。黄金世代と言ってもおかしくないからな。


「そうですか、それならよかったです」


「もう聞きたいことないかな?無いなら私は仕事に戻るけど」


「ないです。ありがとうございました」


「それじゃまたお昼ね」


そう言って看護婦さんはでていった。それにしてもまだ痛むな。臓器にダメージがいっているらしいから当然か。めった刺しにされたし。むしろ二週間で退院できるのがすごいくらいだろう。それだけお医者さんの腕がよかったんだろうな。それから朝食を食べ始める。


「やっぱり味薄いなー。納豆がなかったらご飯も進まなかったな」


そう思いながら俺は朝食を食べ終わった。そしてそれを看護婦さんが回収した。昼になるまで誰も来ないから暇だな。フランス語の単語帳の勉強でもするか。それが終わったら文法を軽く読んで復習をしよう。長文は夜でいいか。俺は単語帳を開き午後になるまで勉強していた。


そして勉強してたらあっという間に午後になり看護婦さんが昼食を運んできてくれた。


「あら、勉強してるなんて偉いねー」


「テストが近いので。恐らく病院でテスト受けることになると思うので」


「わざわざ一人のためにテストを作り直すわけにもいかないし。確かに病院で受けることになるかもね」


できればテスト流れてほしいがな。今までの平均点でテストの点数を出してほしい。それならテストを受けないですむし。俺も勉強を病院でやらないで済む。まぁうちは進学校だから強制で受けさせなきゃいけないとかありそうだが。成績で指定校推薦を取るやつもいるし。俺は文系は上位だから不公平だとかなりかねないしな。


「まぁそいうことなんで、テスト勉強をしてるんですよ。進学校なので勉強しないとテストの点数は取れないので」


まぁ一般入試で東大を受けるから成績はあんまり関係ないんだが、普段から勉強の習慣はつけておかないと東大には受からないからな。テストの勉強も復習になるし。ちゃんと入試を意識したテストになっていて、暗記だけじゃ対応できないテストになっている。


「それじゃお昼はここに置いておくから勉強頑張ってねー」


「ありがとうございます」


看護婦さんはてをはらはらと振りながら病室を出た。お昼は生姜焼か。病院食には珍しく肉なんだな。まぁ味は薄いんだろうけどね。お肉かま出たのは病院食に飽きないためだろう。つまり今日は患者が楽しみにしている特別な日なんだろう。それでもラーメンを恋しく思ってしまうが。それだけ味の濃いのが好きだからな。それに俺は身体的な怪我だから栄養には気を遣わなくていいから、味の濃いものを食べれる。だから奏にマッカンとカップラーメンを頼んだのだ。


俺はお昼ごはんを食べ終わると、日向が持ってきた小説を読んでいた。ラノベ文芸と言われるラノベとは少し違うジャンルだ。文体はしっかりしていて、内容はラノベほどハーレムじゃないが、感動的なストーリーでなかなか面白い。このジャンルも手を出してみようかね。


しばらく小説を読んでいると、病室がノックされた。恐らく奏が来たのだろう。俺はどうぞというと、扉が開かれて奏が入ってきた。


「お兄様元気そうでよかったわ。お兄様が病院に運ばれた時私は友達といて、あまりにもヤバイなと思われたので友達の家で泊まらせられたのですぐに目を覚ましたときに駆けつけられないでごめんなさい」


そんなにショックを受けてたのか。まぁ俺も奏が病院に運ばれたら同じくらいショックを受けるかま知れないから気持ちは分からんでもないが。


「大丈夫だぞ。その友達には感謝しないとな。奏を危ないと思って泊めさせてくれたんだからな」


奏が一人でいたら俺も不安だったからな。ブラコンで日向に何かする可能性もあったからな。日向がなにかをされたら俺が守った意味がなくなる。日向ならなにも反抗せずにそれを受け入れそうなのがさらに怖かったからな。






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