第51話第一部完結

目を開けると、真っ白な天井が広がっていた。そして俺は周りを確認すると、チューブが繋がれていて、ここが病院だということが分かった。日向はあるから無事だったんだろうか?そう思い腕に柔らかいものが当たっていたのでそちらを向くと、日向が俺の腕を胸で挟み寝ていた。俺が興奮して起きるとでも思ったのか?


とりあえず日向を起こすか。ナースコールを押してっと。


「日向起きろ。そろそろ腕の感触がなくなってきてるからな」


「うーん。え?一豊くん?一豊くん目覚めたんだねよがったよぉー」


そう言って俺の腕にわんわんと泣きながら抱きつく。胸をバッチリ当てながら。理性がごりごり削れる。ここは病室だ破廉恥なことはできない。いや家でもしないけど。日向には好きな人がいるのに手を出したりはしない。


「日向はなにもなかったか?」


「うん一豊くんのお陰でなにもながったよぉー」


「とりあえず泣くのは落ち着け」


やがて泣き止むのを待った。少し経ち日向は泣き止んだ。それでもまだ俺の傷を優しく撫でていた。なんか変な気持ちになりそうだ。理性が爆発して襲っちゃいそう。まぁそんな度胸ないんだけどね!


「本当に死んじゃうかと思ったんだよ。私のせいで一豊くんが死んだら私生きてられないよ。手術も出血多量すぎて、生きれるか分からないって言われたくらいなんだよ」


治癒もできたが、あの状況じゃやる暇なかったからな。日向も人質に取られていたし。だがもう日向の悲しむ顔は見たくないからもっと呪術を磨かないとな。義弘までいかなくても土御門として恥ずかしくないくらいにはなりたい。それくらいのレベルになればそこらへんのやつには傷つけられることはないだろう。

「ごめんな。だがあれが最善策だったんだ。わざとやられることによって隙ができたからな」


「それでも死ぬ可能性はあったんでしょ。危険な賭けじゃない?」


微妙に心臓からは視線をずらす術式でずらしていたから致命傷は与えられないが。死んだふりしとけばかってにすぐ離れると思っていたからな。そうすれば後は呪術でどうにかなる。まぁ呪術を使ったから警視庁陰陽科から事情聴取を受けるだろうが。


「勝てる前提でしか戦わないから死ぬことはないぞ」


日向の命がかかっていたら負けるかもしれなくても戦うが。それでも勝てる作戦を用意するからな。俺は日向が幸せになるまで負けるわけにはいかないからな。日向の笑顔を見るために俺は生きている。


「それでもあんな無茶はもうしないでね。心臓に悪いよ」


「分かったよ。あんな無茶なやり方はしないが、日向の命がかかっていたらどんなことでもするからな」


「ダメって言ってもやりそうだし、それは仕方ないね」


それから少し話していると、お医者さんがきて診察をしてすぐに病室を出ていった。まぁ忙しいだろうしな。将来お医者さんだけにはなりたくないな。過労でぶっ倒れそうだし。


「それであいつら無事逮捕されたのか?」


「警察が来たときにはもう既にみんな意識がなかったから、すぐに捕まったよ。どうやら銀行強盗をして、あそこに立てこもっていたらしいよ」


「そうか、それなら安心だな。それで俺は今なに病院にいるんだ?」


「東京大学病院だよ」


天下の東大かよ。よく受け入れてくれたな。いや危ない状態だからこそここにかつぎ込まれたのか。この辺じゃ東大以外対応できなかったのか。まぁあんなに滅多刺しされてればそうなるか。輸血も必要だし。


「ちなみにちょっと家の権力を使ったよ」


日向の家は三菱の創業家の子孫で、さらに島津家の子孫でもある。それと父親は東大の教授だ。その関係でここに運び込まれたのだろう。東大病院ならこれからも安心だ。万が一があってもなんとかなるだろう。それだけ優秀なお医者さんが揃っている。


「それと今日は友達と旅行に行っていたから奏ちゃんは明日来るってよー」


「まぁあいつには友達との時間も大切にしてほしいからそれでもいいんだが。俺だけに構ってると友達との関係が崩れるからな」


「ちゃんと考えてるんだね」


「そりゃ妹だしな。幸せになってほしいしな」

 

「、、、、その様子だと奏ちゃんの気持ちには気づいてなさそうだね。まぁせいぜいブラコンだなぁーくらいしか思ってなさそう。私も簡単に渡すつもりはないけど。奏ちゃんじゃ妹ってのもあるから世間の目があって幸せになれないしね」


「それじゃ俺はちょっと寝るわ。さすが血を流しすぎて眠気がすごい」


「それじゃおやすみー。私明日も来るね」


そう言って荷物をまとめると日向は笑顔で手を振りながら病室をでた。もちろん手は振り返したが。めちゃくちゃ眠い。体の疲労もたまっているな。銃で撃たれて、ナイフで滅多刺しにされて生きてる方がすごいか。まぁ急所はなんとか避けながらだが撃たれたところは心臓付近だったからやばかったが。


俺は横になり目を瞑った。すると日向の悲しそうな顔が思い浮かぶ。もうこんな顔をさせないためにも俺はもっと修行をしないとな。そう思い俺は寝た。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る