第20話

お参りを済ますと、俺達は寺にあるお地蔵様を洗っていた。何の御利益あるかは忘れたが。とりあえず来たら洗うようにしている。そして洗い終えた。


「そういえば何の御利益があるか分からないけど昔からこのお地蔵様をよく洗っていたよねー」


「俺達が幼稚園のときからだったよな。もはやここに来るとこれをするのが習慣になっているな」


そして近くの弁天様を祭る神社で、大学受験がうまくいくように御祈りをした。たしか学問の神様でもあったはずだ。菅原道真公ほど有名じゃないが。だが弁天様自体は全国に祭っている神社が存在する。ちなみに弁天様は蛇だ。たしかここは物知りなお坊さんが弁天様が化けた姿でそれを知った人たちが祭ったのが始まりだった気がする。


「それじゃ金剛力士像でも見るか」


幼稚園の頃はよく見ていたが、改めてその価値を分かるようなってから見るのとは思いが違う。ここのは鎌倉時代ので国宝だしな。松戸で国宝といったら後は戸定邸くらいだからな。


そして俺達は金剛力士像の前に来ると、その迫力に思わず感嘆の声が出た。何百年経っても色褪せることなく、そのままで見れるのは今までこれを大切にしてきた寺のお陰だろう。まぁ本殿は焼けたんだがな。金剛力士像だけでも残っていて良かったわ。他の神社や寺の起源は古いが焼けているのは結構ある。


「すごいねぇー。まるで今作りましたってぐらいの迫力だよ。確かお寺は鎌倉時代に作られたんだっけ?」


「ああ、千葉氏が創建のお寺だ。千葉氏の全盛期に建てられたお寺だからかなりすごかったらしいな。となりの王子神社は高城氏が創建したらしいが。高城氏というの千葉氏の分家だな」


戦国時代まで千葉氏が千葉で力を持っていたんだが、他の国と一緒で家臣に滅亡させられたり、他の大名に滅ぼされたりしたんだよなぁー。それ戦国時代末期ごろには一家臣になっていたし。実力がなきゃ食われるってことだよな。名門が滅びるなんて、この時代じゃよくあるし。


「やっぱ歴史に関しては一豊の右にでる者はいないねぇー。名前からして歴史好きそうだし」


そりゃ名前に関しては父親が山内氏がとった名前だからな。何となく浮かんだからそれにしたと言っていたから特に好きだったわけではなさそうだが。何となくで子供の名前決めるなよ。


「まぁなそれじゃ帰るか」


「うん。そうだね」


俺達はお寺をでて、帰り道を歩いていた。日向は俺の手を握っている。そんなことしたら勘違いしちゃうだろ。まぁ今だけだろうが。日向は落ち込んでいるときに俺が励ましたから特別な感情を抱いているだけだろう。時間が経てば普通に接してくるはずだ。吊り橋効果は少ししか効果ないって感じらしいしな。


「それで日向和希のことはもう諦めたのか?」


「まだ少し思っているよ。ただこれが好きだったのか憧れだったのか分からないけど。今は一豊くんといれるほうが楽しいからそのうち収まると思うよ」


和希のことは憧れだったか。それもありそうだな。日向にとっては初恋に近かったし、好きというものが良く分かっていなかったんだろう。それなら思う存分に日向にアピールできるな。

藤村には絶対にやらん。悲しませるのがヲチだしな。藤村の女癖の悪さは友達が少ない俺まで轟いてるからな。


「それならいいが、辛くなったら言ってな。いつでも相談に乗るから」


「ありがとう」


「お、オーソリティーに着いたみたいだな」


俺達は中に入った。なんか前より高級感が増してないか?一年の頃行った時はいかにもスポーツ店って感じだったが。ブランドぽくしてほしいと要望でも届いたのか?


俺達は野球コーナに来た。やっぱベースマンの方が野球専門店なだけあって色々あるな。まぁスパイクとか、ユニホームならこっちの方が色々なメーカーがあるが。


「やっぱり公式グローブは高いねー。まぁ買えないことはないけど。あ、このピンクのグローブ可愛いなぁー、これにしよう」


やっぱり可愛さを重視したりする辺り、日向も女子だな。キャッチングはそこら辺のキャッチャーより上だけど、配球も頭良いだけあって、組み立てるのがうまい。特に裏をかくのが。


それから日向はグローブをレジに持っていき、カードで支払った。そりゃこれだけのお金を学校に持っていけるはずないしな。クレジットカードで払うのは見慣れたが。


それから家に向かった。俺達は雑談しながら帰ると、すぐに家に着いた。そりゃ近いしな。歩いて数分の距離にあるし。


「それじゃまた来週」


「じゃあね一豊くん」


俺達はそう言ってそれぞれの部屋に入った。入るとエプロンをつけた奏が向かえてくれた。だが俺を少し見て目を細める。まるでなにかを疑うように。


「お兄様、日向さんと一緒に帰ったわね。泥棒猫の匂いがするわ」


そんな引っ付いてないのになんで分かるんだよ。


「それはお兄様につきそうな泥棒猫の匂いは把握してるからよ」


「当たり前のように心を読むなよ」


「お兄様の顔をみれば大体考えてることは分かるわ。それと泥棒猫の匂いが部屋に広がりそうだから早く着替えてくれないかしら」


そんな俺でも気づかない匂いなんか広がんないような気がするんだが。だがここでそれを言うと、今日の夜ごはんはなしだわとか言われそうだから寝室を開けて、そこで着替えた。なぜか奏が来た時だけ俺の着る部屋着から奏の匂いがいっつもするけどなぜだ?まぁ聞いてもはぐらかされるだけだから聞かないが。


「それでお兄様はなんでそんなに濃い匂いをつけていたのかしら?」


「少しの間腕を組んでいたからだと思うが」


「、、、、あの泥棒猫ずるいわ。それよりとうとう自覚したのかしら?散々和希くんが好きだからとか言っていたくせにお兄様と仲がよさそうな人は遠ざけていた。しかも無自覚だから質が悪いわ。まだ気づいてない可能性はあるわね。ヤンデレみたいなところがあるから、気づいたら私のほうにも牽制してくるはずだわ」


「なにかぶつぶつ言ってどうした?」


「なんでもないわ。それより夜ごはんを食べましょう」


「ああそうだな、奏の料理は美味しいからな。奏の夫になる男がずるいわ。まぁそんな簡単に奏は渡さんが」


「安心してちょうだい。私はどこにもいかないわ。それじゃ食べましょう。いただきます」


「いただきます」


そう言ってハンバーグを食べた。肉汁が広がって美味しい。箸が進むわ。それからご飯を食べたりして、それを満足げに奏は微笑みながら見ていた。

 
















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