第15話
「それじゃ俺はバッティング練習してくるわ」
「一豊先輩頑張ってください」
ここでもうちょい話しましょうよぉーと言わない辺り線引きはちゃんとしている。事情をちゃんと理解し、ワガママを言わない辺りしっかりしている。まぁ誰もいない自主練習中なら、こうやって話しかけても問題ないが。他に人がいたらなにあいつ練習中に女子連れ込んでの?とか思われそうだしな。冬優花ならジト目を向けてきそうだ。
「ああ、頑張ってくる。そっちもあまり女子一人で入らなさそうなところには行くなよ」
近衛は興味本位でいろんな所に行くからな。出会いも連れ込まれそうなところを助けたのが始まりだしな。それから生徒会に入ることを提案したりして、相談に乗りながら現在に至る。
「うっそれを一豊先輩に言われると痛いですねぇー。一人でなきゃ良いんですね?興味持った所一緒に行きませんか?楽しいはずです」
そう上目使いで言ってきた。それしてくるのはずるい。それをしてきたら受けるしかないじゃないか。まぁ別に付き合っている人がいないから断る理由がないんだが。
「部活が休みの日ならいいぞ。午後からならな」
「それで大丈夫です!それでは行ってらっしゃい」
「行ってくる」
俺はこの場を離れて、グラウンドに向かった。お、ロングティーやってるな。外野の守備をやっているのは外野手か。ノックよりも実際に打ってくる方が練習になるからな。俺もロングティーさせてもらうか。ピッチャーはベンチ外の投手がやっているようだ。てことはある程度の変化球も投げてるってことか。打つ方も投げる方も練習になるな。
「俺も混ぜてくれませんか?」
「いいぞ、だが投球練習はしなくて良いのか?」
「もう終わりました」
チラッとブルペンを見ると、向井先輩はまだ投げてるようだが。あの人一日200球ぐらい投げるからな。よく怪我しないよなぁー。普通はそれだけ投げると肘を痛めるはずなんだが。まぁ200級以上投げてるお陰で向井先輩はスタミナがあって完投をよくしている。だから俺たち控えピッチャーは強くないチームの時だけ早々に交代して投げている。
「そうか、それなら俺とどっちがヒット性の打球多いか、勝負しようぜ。負けた方がアイスとジュースをおごるってことで」
石守先輩はクリーンナップではないが、レギュラーだ。そして守備でスタメンに入ってるわけではなく、打撃で入っている。つまりよく打つってことだ。センター返しを中心に打てば勝てる可能性はあるか。もし勝ったら高いアイスおごってもらおう。
「いいですよ。それじゃ石守先輩からで」
「ふっそれならプレッシャーを与えてやるよ」
そう言ってバッターボックスに入った。一応投げてるのは一年だがそこそこのピッチャーだからそう簡単には打てない。ベンチに入っていないのはピッチャーの層が厚すぎるからだ。
そして早速球を投げた。ツーシムか、石守先輩はサードゴロを打った。これでワンアウト、あとツーアウトだな。次はスライダーでレフト前にヒット打った。
周りを見てみると、いつまにかギャラリーがたくさん集まってきている。どうやらもう一人の先輩が広めたらしい。冬優花も来ている。目が合うと、手を小さく振ってきた。俺はそれに手を振り返して、再び石守先輩を見た。今ワンストライクらしい。どうやら打てる球ではなかったぽいな。
そしてストレートを振ってセカンドゴロになった。ツーアウト。それにしてもストレート早いな。また球速が上がったんじゃないか。俺も危機感を持たないとな。
そしてスプリットでピッチャーゴロになりヒットは一本だった。
「くそーあいつ結構良いピッチャだな。甘い球全然なかったぞ」
「そりゃ一年生のなかでもトップのピッチャーですからね」
石守先輩がバッターボックスをでて俺が代わりに入った。今日はストレートの伸びがいいから初球はそれで来るはずだ。恐らく外角だろう。踏み込んで打ちに行くか。
俺はフォームを構えると、ストレートが来るのを待った。そして狙いどおり伸びのあるストレートが外角に来たので踏み込んで打った。するとライトオーバの当たりが飛んでいった。ピッチャーも驚いている。そりゃ自分の自信ある球をあれだけ飛ばされたら驚くよな。だけど読めば大体のボールは対応できる。読むのは得意だからな。
「まさかあのストレートをあそこまで飛ばすとは。相変わらずバッティングも良いな」
技術よりも単に読むのがうまいだけだけど。単純な技術じゃ石守先輩には叶わない。だけど野球は次を読むスポーツだから読むだけでも通用するのだ。
それからツーシムも読んだりして結果三安打打った。思ったより打てなかったな。球がそれだけよかったんだろう。特にスライダーはかなり曲がった。あれなら全国でも通用するだろう。
「いやー負けたわ。さすがのバッティングだな。よく代打で登場するだけはある。一豊のバッティングならレギュラー並みだな。まぁチームの方針でピッチャーは守らせてもらえないんだが」
そううちのチームは伝統として、ピッチャーはピッチャーに集中するってルールがある。ピッチャー一人でも怪我すると、戦力が落ちるから分からなくはないが。練習だとバッティングしても良いんだが。
「まぁその方針に文句はないので大丈夫ですよ。ピッチングに影響でたらいやなんで」
守ってからマウンドにたったら足腰が疲れている可能性があるからな。
「それじゃ俺は買いに行ってくるわ。なにがいい?」
「ソフトクリームとマッカンで」
「マッカン好きだよなぁー。確かに着かれた後は結構良いんだが。それじゃ行ってくるわ」
そう言って石守先輩は近くのコンビニに買いに行った。
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