【午後七時三十分】伊神 しのぶ
「俺たちは市章持ちを探すからよ、お前も情報掴んだら教えてくれ」
「鈴木補佐は市章を集めてどうするんですか? 何か叶えたい願いでも?」
「あるに決まってるだろ」
想像できない。自分よりも市民が第一の補佐が命をかけてまで叶えたい願い……?
「ここで死んだ人間を生き返らせるんだよ。こんな下らないことで命を落とすなんて理不尽すぎる……!」
……なるほど、出世できないタイプの人だな。
「それじゃあ気をつけろよ。下では既に何十人と人間が切り裂かれて死んでるぞ」
げぇ、上へ逃げてきて正解だったってこと……?
でも、十階建ての建物で八階の喫茶スペースに誰も来ないということは、エレベーターや階段を使いたくない……状況ということなんだろう。
つまりそこまで死体が転がっているわけか……。
そう思うと、この八階の喫茶スペースは比較的安全かもしれない。
そう思っていたのが慢心だった。
私が用を足しに喫茶スペースを離れて廊下へ向かったときだった、私の胸に突き刺さるような痛みを感じた。
「――っ、これは!? 呪い!?」
背中から胸にかけて鋭い痛みを受け、明らかに私を殺そうとする明確な殺意を感じた。
――この鋭い痛みは『刺殺』!?
誰かが私を刺殺してきた……のか……?
くそっ……市章はもう持ってないに……誰でもいいのか……。
心臓を一突きされ、仰向けになった私を見下ろす影の姿は誰だかわからなかった。
―― 伊神 しのぶ 死亡 ――
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