第475話 235『三人衆見参』
アンナリーナがドゥンケルスにやって来て5日目、門の関所でちょっとした騒ぎがあった。
ボロボロの状態で門にたどり着いた3人の男。
2人は人族、そして1人はオーガ族に見える彼ら……その姿を見てエンドルティーノは確信した。
警戒しながらも近づくと、精も根も尽き果てたと言わんばかりにローブ姿の男が膝をつく。
あとの2人も大きく吐息を吐いていた。
「貴殿ら……もしやリーナ嬢のお連れか?」
「リーナ!?」
髭面の、熊のような男が縋り付いてきた。
どうやら間違いないらしい。
「先日、リーナ嬢はこの町にたどり着き、今はポーションなどを売って生計を立てておられる。
今すぐに使いをやるので、貴殿らはこちらに。大丈夫か?」
膝をついたままのローブ姿の男が顔を上げて、エンドルティーノはギョッとする。
彼は深くフードをかぶっていたのだが、その中には奇妙な面があった。
「ご親切に申し訳ない。
これは……見てもらった方が早いですな。少々お目汚しになりますが、勘弁して下さい」
そっとずらした仮面の下は、醜い火傷の痕がある。
「! すまない」
問題ないと頭を振って、ローブの男はようやく立ち上がった。
「この通りなので、人前ではこうして仮面をかぶっております。
やはり不審ですか?」
「いや、そう言う理由なら大丈夫だ。
こちらこそ無礼をした」
そしてエンドルティーノは3人をアンナリーナと同じ部屋に案内し、話を聞く事にしたのだ。
それは悲惨としか言えない、よくぞ3人が生きてここまでたどり着いたとしか思えない、物語にすらなり得る出来事。
リーナ嬢の護衛として、元々彼女と交流のあった彼らは、珍しい素材を求めて海を渡る事になった。
そして海難だ。
彼らも襲ってきた魔獣の姿は見ておらず、話の内容は少女とほとんど変わらなかった。
そして海を漂う事15日あまり。
ようやく上陸できた大陸では大森林に迷い込み、大変な目に遭った。
ようやく、ギリギリで大森林から脱出し、この町にたどり着いたのだと言う。
「よくぞ無事で」
少女を逃す為に、魔獣を引きつける囮となって、森に分け入った男たち。
エンドルティーノの眦に涙が浮かんだ。
「熊さん! イジ! ネロ!」
ちょうど冒険者ギルドにいたアンナリーナが、報せを受けて飛び込んできた。
迷わず突進していったのは【熊さん】と呼んだヒト族の男の腕の中だった。
「リーナ、本当に無事だったんだな……」
感無量、といった状態で、ただただアンナリーナを抱きしめ頬ずりしている。
側から見ると違和感があるが、エンドルティーノは流した。
「では、リーナ嬢の逸れた同行者、と言う事で間違いないですね?
……ようこそドゥンケルスへ。
我々はあなたたちを歓迎します」
ここからはアンナリーナも通った道だ。
入町料を払い、ギルドに行って冒険者登録をする。
そして身分証を手に入れて宿屋に、今に至る。
「思ったよりも上手くいったね」
すべてが打ち合わせ通り。
だがテオドールとしてはあながち芝居だけではなかった。
船上でアンナリーナと別れ、離れ離れだった日々の事を思い出すだけで胸が引き裂かれそうだ。
その事を思い出すだけで真に迫った “ 演技 ”となったテオドールは今、アンナリーナをその膝に乗せていた。
「とにかく、ようやくこっちで合流出来て良かった」
まだ、先日の “ 訪問者 ”の件も決着していない。
だがこれからは強力なボディガードが3名いるのだ。
アンナリーナは、少しは動きやすくなるだろうと安堵した。
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