第313話 73『極楽鳥のトリ南蛮』
デラガルサダンジョン、2日目。
今回、非戦闘員の従魔たちはツリーハウスに戻り、後の者を連れてアンナリーナは初めて足を踏み入れる12階層に向かった。
いつものように階段の途中で【探索】し、ヒトがいないことを確かめる。
「うん、ここにはヒトはいないね。
さて、どんな魔獣が出てくるのかな?」
「リーナ、油断するんじゃないぞ」
「む……何者かが空から近づいてきます。これは、極楽鳥?!」
甲高い鳴き声をあげて突っ込んできた極楽鳥……大きさは、大柄な男性ほどで極彩色の羽根に包まれた肉食の鳥だ。
この鳥はそれほど強い魔獣ではなく、せいぜいCランクなのだが、厄介なのは常に群れで行動する事だ。
今も視界を覆うほどの数が降下してきている。
「熊さん、セト、イジ、ツァーリ!
【圧縮】で潰すんで、落とし漏らしたのをお願い!
【圧縮】」
ギリギリまで引きつけた極楽鳥が、突然動きを止めて落ちてきた。
ピタリとも動かず地面に縫い止められた鳥たちは、あとはアンナリーナに蹂躙されるのみだ。
そして、それを逃れたものらはテオドールらの各自の得物の露と消えていく。
「ねえナビ、この極楽鳥ってのは食べられるの?」
『はいもちろんです。
極楽鳥は高級食材で有名ですが、産地が限られているのと飼育が難しいためなかなか市場に出回らないのです。
羽根の方も服飾などに利用される、使い途の多い魔獣です』
「決めた!
熊さん、今日はここで極楽鳥を狩りまくりますよ!
明日はこの鳥でから揚げパーティをします!!」
拳を握りしめて高らかに宣言するアンナリーナは、新たな食材を得てテンション上がりまくりである。
「極楽鳥ループをしますよ!
たっぷりとインベントリにため込みます!」
今日はこの12階層に野営地を設けた。
馬車を出し、タープを張り、テーブルと椅子を並べる。
そして全体を強めの結界で囲めば、家族だけの野営の始まりだ。
だがそこにアンナリーナの姿がない。
「リーナはどこに行ったんだ?」
戦斧の刃の手入れをしていたテオドールがふと顔を上げて、通りかかったセトに聞いた。
「主人は向こうで、何か新作の料理を作っているようだ。
今日狩ってきた極楽鳥で、食覚を刺激されたようだ」
「まあ、あいつの料理は美味いからな」
テオドールが満更でもなさそうに口角を上げた。
「おまたせー」
しばらくして馬車から現れたアンナリーナの手には大皿があって、そこには美味そうな匂いの揚げ物にお馴染みのタルタルソースがかかった一品がのっている。
いつもと違うのは甘酸っぱいタレの存在だろうか。
「トリ南蛮です。さあ、召し上がれ」
これにはご飯が合うので、魔導炊飯器で早炊きした。
あとは根菜具沢山の味噌汁とほうれん草のソテー、甘辛く炊いたがんもどき。肉食の連中のためにミノタウロスのステーキが大量に焼かれている。
「皆で食べる、美味しいご飯。幸せ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます