第3話 ツーリスト・アドベンチャー3

 すもも味の飴玉を舐めつつ、亜空間ラムジェット旅客機で三度目の観光旅行。

 到着したのは何の変哲もない過去世界。観て回るほどのものはなさそうだけれど、とりあえずレッツゴー。


 辺りは何やら物騒な、ガラクタだらけの風景。

 ひょっとしてここは、過去に起きたという世界大戦の世界?

 これは大変! いそいでジェット旅客機に戻らなきゃ。

 というところで人と遭遇。

 ごてごてした服装で物騒なものを持った、いかにも怪しい人。


 そんな軽装で何をしているのか、男が尋ねてきた。

 まさか観光旅行とは云えないのでゴニョゴニュ。

 危ないからあっちに隠れてなさい、そう云って男は廃ビルを指差す。

 云われるがままビルに隠れると、パン、と軽い音がして、ごてごてした男がゆっくりと倒れた。

 見ると男の回りを、同じくごてごてした連中が取り囲んでいる。

 先ほどの男はまだヒューヒューと息をしているが、そこに再びパンと音がして、男は沈黙した。


 亜空間ラムジェット旅客機で取り上げられた原子破壊熱線砲があればあんな連中、一撃なのだけど、こちらの世界に干渉してはダメだ、という決まりがある、なんだかとってもくやしい気分だ。

 すもも味の飴玉がとっても苦く感じる。

 ここにいると気分が悪くなりそうなので、早々に亜空間ラムジェット旅客機を呼ぶ。

 ラムジェットはこっちの世界の住人には見えないのでパンパンと撃たれることはなく、駆け足で乗り込んだ。


 毎度ご利用ありがとうございます。

 当機はまもなく離陸し、ワープを開始いたします。

 アナウンスが告げると同時にすもも味の飴玉がなくなった。

 こんな時代、こんな世界もあったんだ、教科書では知っていたけれど、わざわざ亜空間ラムジェットまで使ってのリアル体験なんて二度とゴメンだ。

 あの男性がどんな人だったのかも気にはなるけれど、あの人が生きた過去に戻りたい、という気分にはなれない。

 いいことばかりじゃあない観光旅行。

 知らないでは済まない時間旅行。


 ――おわり

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