モブ鳥落とすイキオイ
鳥尾巻
春の淡雪
『郷里に雪が降っています。道にも、屋根にも、草木にも積もりません。雪は消え往くだけ。淡い哀れな人心を遺して……。日過ぎれば雪兎が添えられ、白い花々は梅、鳴くは梢の鶯。枯木の間は「ギョギョ」と叫び、今は「ホーホケキョ」と鶯色に艶やかに鳴いています。雀は賑やかに巣作りに励み、森羅万象総て春。大陸北端では戦火。悲しい春でも有ります』
ごきげんよう。モブ尾巻、もとい、
このエッセイを書くにあたって、父上からのメールをいくつか読み返しておりました。(表題・本文、一部抜粋)
まるで壮大な物語の序章のようでありますが、ここから始まるのは、胸を絞られる悲恋の物語でもなければ、心躍る冒険譚でもございません。
毎回、他愛もない近況報告を大仰な始まりで送ってくるだけでございます。
人は強烈な個性を持つ人物が近くにいすぎると、自分がモブであると感じるものです。
これは、恐ろしくアクの強い家族に囲まれ、実家の片隅で空気に徹しながら、内心ツッコミを入れ続ける、鳥尾巻のささやかな叫びでございます。
あのな……はよ本題入って、父上。
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