第10話 大変身

「ふむふむ、この構造が光を屈折させて…こうなって…」

ヒカリが今熱心に研究しているもの、それはくじら先輩の髪の毛がなぜ綺麗なのか?

と言うことである。

グラデーションのように色が重なっている、それだけでも人類からすると不思議である。

加えて見る角度によっても色が変わるように見える。

科学者として、解き明かしたいものだ。

どうやら髪の毛の細胞は大まかな構造は人間と変わらないようだが、表面に小さな何かがあり、それが光を屈折させ、色を変化させているようだ。

それと、先輩の歌声についても研究を進めている。

人魚の歌は船乗りたちを惑わせる、という伝説が世界各地にある。

魔法といえばそれまでだが、どうしても解明したいのが科学者のプライドだ。

何度も何度も防音室で先輩の声をレコーディングした。(声だけだとつまらないので歌ってもらった)

一週間前

「ヒカリちゃん…まだダメなの…?」

「はい!まだまだ録音しますよ!」

「えぇ〜!!」

というやりとりがあった。

「この成分を応用すれば!もっと楽に光学迷彩が出来るかも!」

「よし、ここをこうすれば!」

できたかに思われたが…

「ナニコレ、」

ヒカリは、できた物質に見覚えがあった。

それは以前魚人を作った時に見た物質の構造にそっくりだった。

この物質にはやっかいな性質がある。

近くの生命体を取り込んで新たな体を作るのだ。

しかしこれはあくまでヒカリが抽出した時に生まれる物質の性質にすぎない。

おそらく先輩の体の一部である時にはその性質はなくなる、または切り離された時に性質が変異する、と言うことだろう。

「まずい、、、」

不運なことに研究室には一匹のハエが入ってきていた。

「あっ……」

気づいた時にはもう遅かった。

物質はハエを取り込み、まるでハエの怪人とでもいいたげな姿に変貌した。

「あはは…」

怪人は猛ダッシュで扉をブチ破り、校内に侵入した。

「まずい、コイツが向かってるの…」

くじら先輩だ。

やはり元の細胞の持ち主というだけあって惹かれ合うのかもしれない。

「こうなったら!」

ヒカリはワープ機能を使って怪人の前に現れた。

「っええ!ヒカリちゃん!?今どこから!?そしてその怪人はなに!?」

先輩は混乱している、無理もない。

「えーっと先輩、簡単に言うと…やっちゃいました!テヘ!」

「やっちゃいましたじゃないよぉ!」

「とにかく!下がっててください!」

ヒカリの奥の手、それは…


「変身!」


変身システム(仮)

それはヒカリがトラブルを自分で処理するために開発したシステムである。

ワープ技術の応用により短時間での装着を可能にした。

(上手くいった…)

「ヒ、ヒカリちゃん、どうなってんのそれ?」

「まあ、後で説明します!」

ヒカリが怪人に蹴りを入れると、怪人はその場に倒れ込んだ。

(ヒカリちゃん、あんなに強かったっけ?)

「一気に行きます!」

腕にあるボタンを押してシステムを起動させる。

「EMPドライブ、発動シマス」

「そりゃああああ!」

ヒカリは高くジャンプするとそのまま飛び蹴りを喰らわせた。

「ギャアアアア!!!」

怪人はボロボロと崩壊している。

ハエは中から出てきてそのまま飛び去っていった。

「解除シマス」

機械音声が響き、鎧が消えた。

「はぁ、はぁ、」

「ヒカリちゃん、大丈夫?」

「大丈夫、です」

そう言ったものの限界だ、ヒカリは倒れてしまった。


保健室

「あれ、私何して…あぁそうだった、先輩を助けて…」

目を開けると横には眠目先生が立っていた。

「ヒカリ、生徒を守ったのはいいが…」

「EMPのせいで学校中の機械が不具合を起こしたぞ」

視線が冷たい。

「まあ、しばらくはお咎めなしにしておく」

学校の機械を直させられるのは、また別のお話。

続く。



あとがき

今回結構自分の趣味反映しちゃいました!不満点や解釈不一致などあればどんどん言ってください!

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