第623話 上層散歩
夕乃の言葉と、カレンがくれた服の効果で、
緑箋たちは検問を通ることを許された。
緑箋たちも無事に通れてほっとしたが、
検問所の方が問題がなくなってもっとほっとしていただろう。
こんなところで逆鱗に触れる訳にはいかない。
検問所から少し進んだところで夕乃は笑い出してしまった。
「あはははは、いや危なかったね。
まさかカレンちゃんがくれたこの服がこの窮地を救ってくれるとは、
夢にも思わなかったよ」
「まあ確かに、カレンがくれた服がなかったら危なかったかかもしれんな」
「それ危なかったんは遼香ちゃん?
それとも検問の人たちのこと?」
確かにあの検問所が消し飛んだという可能性もなくはない。
「私はそんなに野蛮なことはしないぞ」
「あははは、冗談だよ冗談。
でも本当に何にも問題がなくてよかったよ」
本当に結局何事もなく無事に上層へと辿り着いた。
上層は段上に町並みが構成されている。
上層の下の方が上層でも一般の魔族たちの居住区になっているようで、
上に行けば行くほど、巨大な屋敷が立ち並ぶようになっている。
高さが魔族の位と比例しているのかもしれない。
正面の道の一番奥には、
このレヴィアタンの統治するところでは、
一番巨大な真っ白な城が建っている。
今登ってきた下層と上層を分ける壁よりも壁のように巨大な建物になっている。
「それでここまできましたけど、
本当に城の中まで行くんですか?
レヴィアタンが亡き今、
一番入りやすいといえば入りやすいのかもしれませんが……」
当初の計画、
というか暇な穴の中での話し合いと、
朱莉たちとの相談で決めた話では、
できるだけ魔王島の調査を行うと言うことで話はついていた。
調べられる場所は調べておきたい。
特にレヴィアタンの居城については、
千載一遇の機会であることには間違いがない。
「まあ行けるところまで行ってみよう。
いざとなったら、緑箋君と夕乃の魔法で何とかなるだろう」
結構いい加減な話ではあるが、
緑箋たちが結構ゆるゆるな感じで敵地の中を散策しているのは、
潜入系の魔法が豊富だからということもある。
何となく何とかなるだろうという自信があるのだ。
レヴィアタンの居城は見えているので、
すぐに辿り着くかと思ったが、
行けども行けども辿り着くことがない。
むしろ近づけば近づくほど大きくなり、
さらに遠くなったようにすら思えてきた。
「これ幻覚じゃないですよね?」
代田が何かに化かされているんじゃないかと疑う位、
城には辿り着けない。
だが、後ろを振り返るとかなりの道のりを通ってきたことがわかる。
検問所はもう豆粒みたいになっていてよく見えない。
島といえどもかなりの大きな島であり、
レヴィアタンの城下町として存在しているここも、
一つの都市くらいの大きさはある。
これだけの城下町を作ったレヴィアタンの力を窺い知ることができる。
今は無月の中に吸収されてしまったが。
緑箋はそう思いながら無月を触る。
「おい、気をつけろよ」
緑箋が無月に触った瞬間、無月が喋り出した。
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