第620話 巨大な階段の上

真っ白な石の壁と、

青い屋根で統一された、

石造りの街が広がっている。

道と共に水路が張り巡らされていて、

水の都といった雰囲気である。

レヴィアタンの理想の街づくりだったのかもしれない。


「これだけ統一された街づくりは流石に見事ですね」


「魔王の統治している城下町ってことなんだろうね」


緑箋も代田も下層とは違う見事な街に驚いている。

階段も最上段付近になってくると、

街の姿はさらにはっきりとしてきて、

会談の真正面には大通りが正面の大きな城まで一直線につながっている。

防衛機能としてはとても危険な街であるが、

それはレヴィアタンの自信の現れなのかもしれない。


「おい浮かれてんじゃねえよ。

気をつけろよ」


今まで無口だった無月が急に口を開いた。

正確には口は開いてはいないが、

喋りかけてきた。


「何に気をつけたらいいんだ?」


「さあ、そこまではわからん。

俺の心がそういってるんだよ」


無月の心はよくわからないが、

もしかしたら、無月の中のレヴィアタンの魔力が、

何か警鐘を鳴らしているのかもしれない。

無月の心配は、階段を登っていくとわかった。


階段の一番上まで登るとその先には検問が敷かれていた。

当たり前の話であるが、

階段が開いたからといってそこが自由に通れるとは限らない。

むしろ出入りをしっかり監視するためのものだということは、

少し考えればわかる話である。

先を行く魔族たちをみていると、

真ん中を何もせずに通行していく魔族もいるが、

隅の方で検問をしている魔族と何やら話して揉めているような魔族もいる。

しかし真ん中を通る魔族は特に何もせずに普通に通っているところを見ると、

何か必要なのかもわからない。

ただ時折そのまま通行を許さずに、

隅に連れて行かれる魔族もいるので、

何かの違いはあるようである。


「どうしますか?これこのまま正面を通行しますか?

それとも少し様子を見ますか?」


「姿を消して通るって手もあるよ?」


夕乃の言うように魔法で姿を消すこともできなくもないが、

おそらくそういう魔族はいるだろうから、

何がしかの対策がされている可能性も高い。

もしかしたら強行突破というものもいるかもしれないので、

その辺りの対策はやはり取られていると見た方がいい。


「まずは何もせずに普通に通行してみよう」


遼香は強行突破するつもりなのだろうか?


「遼香ちゃん、ほんとにそれで行けると思う?」


「多分無理だろうな」


「じゃあ危ないんじゃないの?」


「危険がないとは言えないが、

別に暴れるわけでもなければ、

隅に連れて行かれるだけだろう。

知らなかったといって引き返すそぶりでもすれば、

問題はないんじゃないか?

まあその場合、

また別の入る方法を探さないといけなくなるけどな」


素直に通れたら儲け物ということで、

四人は通行する魔族にそのままついていくことにした。

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