第611話 穴の終わり

さらにしばらく進むとようやく行き止まりになった。


「ようやく終点ですけど、

上に穴はありませんね」


緑箋が辺りを照らすと、右の奥の方に道が折れ曲がっている。


「あの奥から穴が上に伸びてますね」


代田のいう通り穴は上に向かっている。

地図中でもすでに魔王島に差し掛かっているのがわかる。

ついに目的地まで来たというところだろう。


「じゃあ用心していきましょうね」


夕乃はトロッコを手動にして、

さらに他の部分を消し、最小限の構成に変える。

穴は縦横縦横と細かく上に続いている。

いきなり真下まで掘れなかったのか、

最初はまだ穴作りに苦戦していたのかわからないが、

一気に上まで繋がっているわけではないようである。

明らかに出口が近くなっているのはわかる。

しかしここまできても魔族の痕跡はない。


本当にこの道で合っているのか、

それとも罠なのかという緊張感が走る中、

着実に魔王島の上に道は続いている。

そしてついに上の穴から光が差しているのがわかった。


「到着しましたよ。

魔王島です」


流石の夕乃も声を小さくしている。


「では作戦通りいきましょう」


緑箋はみみえんの魔法をかける。

トロッコは姿を消す。

今回はおとおふまでは使わない。

全く連絡が取れなくなってしまう危険があるからである。


夕乃はゆっくりとトロッコを上に浮かせながら、

出口の穴を覗っていく。

まず、顔が出るくらいまでトロッコを上に上げる。

巨大な穴は、巨大な建物の中に入っていた。

雨などの影響を避けるためなのだろう。

地図によれば魔王島に南東のあたりについているようである。


辺りを見渡しても敵の姿は見えず、

魔力も感知できない。

すでにここは放棄されているのかもしれない。

巨大な建物の中の広場には、

魔族が乗ってきたであろう、簡易的な乗り物、

要するにトロッコのようなものであるが、

それがいくつも並んでいる。

考えることは一緒である。


緑箋たちのトロッコはそのまま建物の端の方に隠しておいておいた。

そして緑箋たちはついに魔王島へと上陸したのだった。

といっても建物の中なので魔王島がどのようになっているのかはまだわからない。


各々の魔法探知によってこの建物の中にいないようなことはわかったが、

外には魔族たちが歩いていること確認できた。

緑箋たちはこの広い建物の外に出ることにした。

巨大な建物なのでいくつか扉があるが、

窓がないため外がどちらなのかもよくわからない。

敵の姿が見えないので、緑箋は一旦みみえんを解除した。

見えないのは見えないで不便である。


遼香は近くの扉を指差して、

その扉に一行はむかう。

遼香は気配を探知しながら、

ゆっくりと扉を開ける。

扉は外につながっていて、

日光が差し込んできた。


遼香はゆっくりと扉を開けながら、外の様子を確認する。

特に魔族が見張っているということもないようである。

それもそのはず、人間が来るとは夢にも思っていないのだ。


遼香たちは扉の外へ足を踏み入れ、

まさに魔王島へ上陸を果たしたのだった。

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