第608話 穴の半分を過ぎて
穴を進み続けて丸一日が過ぎている。
目的地が魔王島であるのならば、
すでに穴の半分程度まできているはずである。
変わり映えのしない闇の中をただただトロッコが進んでいく。
すでに時間の感覚もなくなっている。
とりあえず四人は短い休憩を後退して取ることで、
それぞれの睡眠時間は確保できた。
少し遅くなるが、移動用のトロッコの後ろに、
寝室用のトロッコを作って取り付け、
安眠を確保した。
移動しながらでも新しい設備が作れるのは魔法の素晴らしいところである。
土魔法が得意な代田に魔法を教えてもらいながら、
緑箋と二人で荷台を作成していると、
結局遼香と夕乃も一緒になって作り出した。
夕乃はなぜか装飾に凝り出して、
暗闇に光を灯して一生懸命に飾りを取り付けた。
遼香は単純に大きくしたくなったようで、
不必要なほどの大きさの荷台を作り、
訓練する場所をも確保した。
もうトロッコというよりは、
ちょっとした小型戦艦のような感じになっている。
こんなことでもしなければ暇を持て余し過ぎている。
移動時間がなくなってこんなに長く移動することがないということもあるが、
流石に何も変わり映えがしなさすぎるし、
途中に何かがあるわけでもないので、
本当に何もすることがないのだ。
ちょっとした拷問のようになっている。
それでも無事でいるのはこの四人がどのような状況下でも、
物事を楽しんでいける性質を持っていたからだろう。
ご飯は用意してもらったご飯をみんなで食べ、
それもまた遠足みたいで楽しんでいた。
そして広くなったトロッコの中ではより激しい訓練が行われている。
移動しているものの上の中での戦いは、
お互いに移動している間に戦うことを想定して、
より実践的な訓練が行うことができた。
ただ肉体的な損傷を与えることは回復魔法があるといえども、
危険が伴うため、
見た目だけの魔法を使って訓練を行うなどの工夫をし、
魔力をそれほど消費せずとも、
実践的な訓練が行えるように工夫した。
それによって実は魔法の効率的な使用ができるようになり、
低魔力なのに高威力の魔法を開発することもできた。
遼香だけが戦闘狂のように思っているし、
他の三人はそう信じて疑っていないが、
緑箋はもともとの凝り性がこの世界に来て変なふうに顕現し、
今の魔法の魅力に取り憑かれたようになっているし、
代田は元から大地を作るような能力の持ち主で、
どちらかというと神や精霊に実は近い存在だし、
夕乃はそんなみんなの様子を見てゾクゾクするような、
あからさまにおかしい人間でありながら、
忍者としての技術を応用した隠密能力もものすごいものがあり、
これによって各自の魔法能力を高められるとても貴重な経験になっていた。
こんな四人が揃って自由時間を与えられるということは、
もう二度とないと言ってもいいだろう。
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