第605話 長い穴の中で
「そもそもこれ何時間?いや何日かかるんでしょうか」
緑箋はこの穴が魔王島まで飛んでいくとすると、
かなりの時間がかかることに気がついた。
「一応想定では2日で着く予定になってるな」
「皆さんはこんなに長時間移動することなんてあるんですか?
転送ですぐですよね?」
緑箋は前の世界では、
電車で長旅もしたことはあるが、
流石に2日間の移動というのは経験したことがなかった。
「私は世界を回っていた時は転送装置を使わなかったが、
流石にこれだけ長距離を一気に移動というのはなかったかもしれないな。
超高速の移動は危険も伴うから、
今はあまりやる人も少ないだろう」
遼香でもそうなのであるなら、
空を飛べるとはいえ、事故も多発するだろうから、
一応みんな気をつけているようである。
「私も長距離移動はあまりしないわね。
むしろじっとしてる方が多いかもしれない」
「そうですよね。何かの対象に張り付いたりするんですよね」
「そうそう、相手によっては数年張り付くなんてこともあるからね。
まあ同じところにずっとというのはそんなに多くはないけど、
隠れ家に数ヶ月なんてのはざらだね」
「なんかそういう話を聞くとかっこいいいですよね」
スパイ映画のような話ではあるが、
現実にこの世界でも行われているようである。
今は人間間の争いというよりは、
魔族の調査の方が多いようだが。
「そうよね。
やっぱり私ってかっこいいわよね。
緑箋君はよくわかってるから好きよ」
夕乃は相変わらずである。
だがこの明るさは、
この全く変わり映えのしない移動中にはとても心強い。
「代田さんも以前は旅行されたりしたんですか?」
「そうですねえ。
私は旅行というよりは移動でしたかね。
あまり邪魔にならないように各地を転々としてましたから。
いろんなところにはいきましたが、
まさか今みたいなことになるとは夢にも思ってなかったです」
ダイダラボッチは各地で伝説が残っている。
その全てが本当にダイダラボッチの痕跡ではないのだが、
その中にはいくつか本物もあるのだろう。
ダイダラボッチ自体はその昔のことをあまり覚えていないようではあるが。
人間の世の中になった後のことはそれなりに覚えているようである。
「まあまだまだ時間はかかるから、
二人ずつ交代して休むことにしよう。
今のところは前方にも何もないようだが、
これほどのスピードでこっちも移動しているのにも関わらず、
何にも出会わないというのも不思議ではあるな」
遼香のいうことは尤もである。
ただの雑魚集団であれば、
そろそろ脱落している魔族たちもいそうであるのに、
今のところ何にも出会っていないのだ。
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