第602話 穴を進む

空を飛ぶことはできるが何が起きるかわからないため、

トロッコに魔力を詰め込んでもらって飛んでいくことで、

魔力を節約する。

穴は綺麗に真っ直ぐに前に伸びている。

岩盤が硬い、また水漏れなどが起きる心配もあるが、

それも全て魔法によって簡単に穴が開けられている。

今のところは穴を爆破して塞いでいる様子もないため、

トロッコの前につけられている光源によって、

穴は遠くまで道が照らされている。

光源があるとはいえ、

穴の中には光はなく漆黒の闇が広がっている。

魔族はどのように対処していたのかわからないが、

闇に蠢く魔族は闇の中でも目が見えるものも多いのだろう。


「流石に暗いので、少し見えるようにしますね。

猫眼円びょうがんえん


緑箋は呪文を唱えると、

一行は闇が見えるようになった。


「あら、これはすごい呪文ね」


夕乃は緑箋の呪文を楽しそうに感じている。


「本当に緑箋さんのスキルはすごいですよ」


代田はいつも感心している。

なかなか戦況を即覆すような大規模な効果があるスキルではないが、

しっかり仲間の能力を底上げしてくれる貴重なスキルである。


「でも私だって闇でも目が見えるんだからね」


夕乃は隠密作戦を得意としているので、

忍者として、そういった術にも長けているのだ。

なぜか対抗したくなるのは、夕乃の性格の問題だろう。


それぞれがそれぞれのスキルや魔法を活かして、

前を感じながら進んでいる。

取り残されている敵などがいることも考えられるからだ。

しかし誰も今のところは敵の魔力を感じていない。

緑箋たちが穴に入るまでには色々な準備は必要だったので、

少し時間が空いてしまった。

それによって敵はどんどん先へ逃げてしまっているわけだが、

逆にそれは無駄な戦いをしなくてもいいというところでもある。


魔王島自体は日本の東、

アメリカとのちょうど中間地点にある大きな島である。

ハワイの北側に位置している。

どの大陸からも一定の距離ということもあって、

なかなか人間の調査も行き届いてはいない。

今回はレヴィアタンがいて一部統治していたという話になっているが、

他にどのような魔王がいるのかは詳しくはわかっていない。


カレンたちからの情報によると、

レヴィアタンとサタンが分割して統治している島ということであるが、

直接的に強い支配があるということでもないらしい。

魔王の圧倒的な魔力によって支配されてはいるが、

それは本当に戦闘になるときぐらいのもので、

あとは人間界と同じような普通の生活のようである。

ただ人間よりも厳しい階級制度があり、

上級以外の魔族はスラム街のような場所での暮らしを余儀なくされている。

カレンたちが今回日本へ亡命したのも、

そのような厳しい環境があったためであるが、

ある意味その辺りは人間界よりも魔王島の方が厳しい環境なのである。

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