第601話 穴の中へ

すでに調査隊は中に入っており、

毒ガスや罠などを調査しながら、

ある程度の奥までは調査をしている。

今のところ近くには罠も敵もいないようで、

すでに逃げ帰っている。

それもそのはずである。

こんなところに残っていたら何があるかわからないのだから、

我先にと逃げているはずである。


初めはかなり深い穴が下に垂直に伸びているだけである。

飛べるのだから垂直で何も問題はない。

緑箋以外には。


そして穴の底からは東の方へと穴が続いている。

やはり魔王島の方角である。

緑箋たちは荷物を受け取って、

穴の調査と魔王島の潜入調査へと向かうことになった。

遼香たちは昇降機に乗ってみんなに手を振って挨拶をする。

これだけを見れば何か遠足にでもいくような場面である。


「緑箋君、気ーつけて!」


そういう咲耶の心配そうではない明るい声が、

緑箋をとても勇気づけてくれていた。

そして昇降機の床がゆっくりと地下へと降りていく。


「だいぶ深い穴みたいですね」


「1キロ以上、下まで掘られているようだ。

それくらい深くなかったら、

我々に検知されていただろうからな。

振動もそれほど表面まで伝わってこなかっただろう」


地上の光はあっという間に届かなくなり、

魔法の光が点々と付けられている。


「代田さんはこんな穴掘ることができますか?」


緑箋は気になって、土属性が得意な代打に質問してみた。


「多分できなくはないと思うんですが、

こんなことをやってみようと思ったことがありませんからね。

それとここまで大きな穴を開けるのは私一人の力では、

相当時間がかかると思います」


代田でも難しいのならば緑箋には到底できそうもないことである。

それをレヴィアタンはやってのけたので、

今回のような奇襲が成功しそうになったというわけである。

結果的には奇襲は失敗に終わったが、

この穴を掘って敵に攻撃を仕掛けるという目標は達成されてしまった。

ただこれが今後世界中でこの奇襲作戦が行われるかというと、

多分そんなことはないんだと思う。

なぜならあまりにも奇襲作戦には危険しか伴わないからである。

この奇襲作戦を単独で行ってもあまり意味がない。

今回のように最初は成功したように見えるけれど、

結局ジリ貧になって戦力を失うだけになるからである。

そしてこの奇襲作戦が成功した最大の理由が、

レヴィアタンの恨みによるものだから、

今回のように執念深く気持ちを持ち続けられるようなものでなかったら、

こんな頭のおかしい作戦を取ることはなかったはずである。


昇降機がようやく地下まで辿り着いた。

地下で作業している軍の関係者には、

すでに遼香たちが行くという連絡は来ているようで、

トロッコのような空を飛ぶ乗り物が準備されている。


「途中まではこれで飛んでいけると思いますので、

これで進んで行ってください。

ただ奥地の方はまだまだどうなっているかわかりませんので、

十分注意してください」


軍の関係者に促されてトロッコに乗り込む、

そして一行は更なる穴の奥へと進んでいく。

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