第600話 出発前の準備

「そんなもの答えるまでもないでしょ。

遼香ちゃんの影は私なんだから」


夕乃はそういって遼香に抱きつこうとするが、

遼香はハイハイというように手で払う。

しかし夕乃がついてきてくれるというのは心強い。


「もちろん僕も行きますよ。

やっぱり僕の責任でもあると思いますから」


気にする必要はないと言われていた緑箋は、

自分の所為ではないという理屈もわかっているが、

自分の所為でもあるという感情もある。

そしてそれとは関係なく、

魔族に対して手を打とうとしている遼香の力になりたいという気持ちも大きい。

ただ単純に戦争をするだけではなく、

もしかしたらカレンたちと同じように別の道を探すための、

今回はとてもいい機会なのではないかとも考えていた。

ということで緑箋は素直に行きたいと返事をした。

残るは代田である。


「もちろん僕だって行きますよ。

遼香さんがいれば問題ないような気もしますけど、

やっぱり私も遼香隊の一員ですから。

足手纏いにならないように頑張ります」


代田も覚悟を決めているようだった。


「よし、ありがとうみんな。

これで今回の作戦はこの四人で行うことにする。

朱莉、準備の方と後方支援のよろしく頼む」


「もちろんです。そこは心配しないでください。

こちらの方は全て対応させていただきますから」


「カレンたちもわざわざすまない。

魔王島の詳しい情報の方は朱莉に教えてもらえると助かる。

もちろんカレンたちが出したいと思うものだけで構わない。

言いたくないことは言わなくて結構だ。

それと何かしてほしいこともあれば後で連絡してくれ」


「わかりました。

地形の情報などはお渡しできると思います。

それと、これを受け取ってください」


カレンは遼香にフード付きのマントを渡してくれた。


「これは?」


「これは魔界で作られているマントです。

大衆向けの一般的なマントです。

魔界で作られているものですから、

もし見つかっても少しは目立たないで行動できるかと思います。

人間の魔力や嗅覚に敏感なものもいますので、

念の為ということで」


「これは助かる。ありがとう!

使わせてもらうよ」


遼香たちはカレンたちと固く握手を交わした。


「さて、じゃあこちらも時間がないからそろそろ出発しよう!

魔族たちが向こうに着くまでにはまだ時間がかかるだろうが、

どの程度の速さで進行しているかはわからない。

逃げた魔族が穴をどうするのかもわからない。

もしかしたら途中で破壊されているかもしれない。

そこは気をつけて進んでいこう」


咲耶の未来視によっておそらく命の心配はなさそうではあるが、

無事に魔王島まで辿り着けているのかはわからない。

そして何か収穫があるのかもわからない。

雑魚ばかりならばそれほど気にする必要もないが、

ただレヴィアタンの近くにいたメイドがどこに行ったのかが気になる。

レヴィアタンとの戦いではすでにその姿が見えなかったのだ。


「みんな、あとのことはよろしく頼む。

よしいこう!」


遼香たちはみんなに挨拶をして、

穴へと向かっていった。

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