第598話 急拵えの作戦
「いやいや、緑箋君、流石にそれは無理だよ。
向こうも罠を張って待ち構えてるかもしれないし、
内部にはまだ敵が残っているかもしれないし、
危険すぎるよ」
代田は誰が聞いても正論を述べた。
代田の言うとおりである。
普通は。
すでに敵はこの穴から逃げている状態であり、
内部がどのようになっているかもわからないので、
危険なのは間違いがない。
「代田の言うのももっともだが、
ここは緑箋君の進言を採用するべきだ。
この機会を逃すわけにはいかない」
遼香はそういうと言うと朱莉に連絡を取った。
「遼香さん。
本当にやるんですね?」
すでに朱莉には情報は伝わっており、
いくつかの戦略も想定されていたようである。
その中の一つをやると遼香からの連絡である。
朱莉はいつくかの想定の中から、
遼香の取りそうな戦略についてすでに指示を出している。
「ああ。
そっちの方はどうだ?連絡はついたか?」
「はい、すでに確認済みで、
協力してくれるそうです。」
「そうか、それは助かるな。
じゃああとは頼んだ。
準備の方をよろしく」
「わかりました。
逐一連絡してくださいね」
「できるだけな」
「本当に行くんやな?」
「ああ、隊長でもそうしたでしょう?」
「いや、わしはそこまではできひんよ。
遼香の立場ではな」
守熊田はそう言いながら遼香の肩をポンと叩いた。
「咲耶ちゃん、悪いけど、
できるところまででいいから未来視で見てもらえるかな?」
「そう言うことやねんな。
わかったわ!」
咲耶を連れてきたのはここで先を見てもらうためであった。
あまりにもひどい未来ならば流石の遼香もこの作戦は取りやめるつもりだった。
咲耶が集中している間に、遼香は確認を取る。
「緑箋君、代田、それに夕乃」
「はいはい、ここにいますよ!」
夕乃は遼香の影から半身だけ姿を現した。
こんな時でも普段通り何も変わらない。
「これから穴の調査へ向かう。
おそらくは魔王島への道が繋がっていると思う。
敵の本拠地の一つへ向かうことになる。
この作戦には非常に危険が伴うから、
これは強制ではない。
辞退したければ辞退してもらって構わない。
こう言われてしまっては辞退しづらいかもしれないが、
ここは自分の意思に従って正直に答えて欲しい。
命令とか関係なく、
素直な気持ちを教えて欲しい。
逆に無理している方が危険に晒されることにもなりかねないからな。
代田も緑箋君がいなくても
もう巨大化の兆候はかなり抑えられているだろうから、
本心を教えてくれ」
聞かれた三人はそれに答えようとした時、
向こうからこちらへ人影がやって来た。
「もう、遼香さん、本当に行くんですね」
やって来たのは朱莉である。
「ああ、そうだ。
いつもすまないな朱莉」
「遼香さんの行動をなんとかするのが私の仕事ですから、
こっちのことは何にも心配しないで行って来てください。
自分たちのことは心配してくださいよ」
信頼関係に結ばれている二人である。
そして朱莉の後ろには見慣れた三人もやって来ていた。
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