第597話 敵の行動への推察

周りでは軍の関係者が様々な作業をしており、

建物もどんどんと建てられている。


「この穴はどうするんですか?」


「今のところはこのままだな。

穴を掘るところは感知できなかったのは残念だが、

もし今後ここから敵が来るようなことになれば、

それはもう逃さない。

また他のところにも今回のような奇襲が行われることもないとは言わないが、

主要なところでは地下の魔法感知も行われている。

まあ重要地点でないところの方から奇襲される方が多いとは思うが、

流石にそこまでは配置できていないのが実情だな。

これほどの深さで、おそらくはかなりの遠距離から来ているというのは、

作る方もかなりの魔力を使ったはずで、

簡単にできる作業ではない」


「今までもあまりなかった作戦なんですね」


「魔法を使えば穴なんて簡単に掘れると思うかもしれないが、

掘ることはできても潰れることも想定しなければならないし、

永遠に固めておくような魔力を使い続けるのも、

実用的ではない。

今回はレヴィアタンの執念の賜物という気がするな。

迷惑な話ではあるが」


「簡易的な軍事作戦として、

穴を掘って急襲するという作戦もないわけやないけど、

振動や音で敵に簡単にバレることが多いし、

労力の割に効果が低すぎるから、

採用されにくいやないかな」


「隊長のいう通りだな。

作戦案としては常に出てくるが、

採用されることはほとんどない。

結局は数での正攻法が一番確率が高いし、

被害の減少にも繋がるからね。

それで咲耶ちゃんはどう感じるかね」


「うーん、そうやなあ。

今は何も感じひんってのが正直なところやね。

今後ここで何が起こるかっていうことなら、

何も起きひんのじゃないかな」


遼香は今後の敵襲に関して、

咲耶に確認したかったのだろう。


「やっぱりそうだろうな。

ありがとう咲耶ちゃん。

これがレヴィアタンの単独の作戦であるならば、

今回の戦いでこの穴は使われることは多分ないだろう。

ここを狙う理由がほとんどないからね。

だがそれは向こうの都合であって、

今度はこっちの都合が変わってくるわけだよ」


緑箋はとても嫌な気がしている。

遼香の考えがもし緑箋がいま思いついたことと同じならば、

それを使わない手はないという気もするし、

また効果的であるというのもよくわかる。


「今度はこっちから攻め込むっちゅうわけやな!」


咲耶も理解したらしい。


「いや流石に向こうの様子もわからないのに、

無駄な戦闘は避けたい。

なので即行動するということはないよ」


「そんなに簡単に上手いことは行かへんよね」


「ただこの穴を利用して相手のことを探ることができるかもしれない。

今までは謎に包まれていた

魔族の様子を観察することができるんじゃないかと考えている

まあこれは今後の調査次第になるだろうが」


「いや、遼香さん、すぐ行きましょう。

これは一刻の猶予もありません」


緑箋は珍しくはっきりと自分の意見を突きつけた。

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