第596話 侵入経路

「さあ、じゃあ無駄話はこの辺にして」


「おい、遼香誰が無駄話やねん!」


無月の抗議の声は無視されていく。

無月が喋れるようになって、

なんだかより大変なことになった気もする。


「今回のレヴィアタンの襲撃についての報告があったので、

情報を共有しておきたい。

端末に情報を送ってもらったので確認してもらいたい。

今のところ確定情報ではなく、

機密扱いの情報もあるが、

ここにいるものには私の権限で情報を開示してもらっている。

そのうち公式発表があると思うので、

そのあとは情報も解禁されるはずだ」


遼香のいう通り、

情報が端末に入ってきていた。


「ではまず現地に行った方が早いので、

そちらに行ってから情報を共有しよう。

隊長と咲耶ちゃんも同行してもらいたい。

寮の関係者はまず軍の方で確認するので、

そこは安心してもらいたい」


「ああ、そうしてもらえると助かる」


「寮長はわかるけど、

うちも行っていいの?」


「ああ、ちょっと意見を聞きたいのでね」


遼香がそういうならと咲耶も同行することになった。

遼香、緑箋、代田、守熊田、咲耶が軍の関係者に案内されて向かった先は、

白龍寮から少し離れた深い谷底だった。

すでに谷底の周辺は軍によって封鎖されていて、

軍の関係者が忙しなく動き回っている。

そして谷の底へ向かうと、

そこには巨大な穴が空いていた。


「これが今回の魔族の侵入経路になる」


魔族は空でも海でもなく、

地下からやってきたということになる。


「報告書を見て貰えばわかるが、

ここから数キロ地下まで穴は続いているようだ。

まだ全貌は掴めていない。

魔族の襲来と待ち伏せがあるかもしれないので、

本格的な調査はこれからになるが、

今は封印している。

ただ穴の簡易調査をしたところ、

出口はここだけだったようで、

今のところ、日本のどこかにそく攻め込まれるというようなことはないと思う」


「ということは本当に白龍寮を狙った攻撃だったということでしょうか?」


「緑箋君のいう通りだな。

おそらくはそうだろう。

レヴィアタンの個人的な恨みというのが、

今回の攻撃の目的だと思われる」


「中途半端にしたために、

みなさんにご迷惑をかけて申し訳ありません」


緑箋はとりあえず、ここのみんなに頭を下げた。


「いや、緑箋君それは違うぞ。

あの時はあの時で最高の仕事をしてくれた。

緑箋君がいなかったら、

もっと被害は大きくなっていただろう。

緑箋君に落ち度はない。

これははっきりさせておこう。

ただ狙いは緑箋君だったのも事実だろう。

しかしそれもたまたま運命が緑箋君を選んだだけで、

緑箋君がいなかったら、別の誰かが狙われただけかもしれん。

そこは緑箋君が考える必要はないよ

たまたま運が悪かったというだけだ」


遼香はそう言い切った。

緑箋を慰めようという意図はほとんどなく、

ただ事実を淡々と述べているだけである。

だが緑箋にはその道場も何もない言い方が本当にありがたかった。

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