第575話 緊急連絡

緑箋に連絡してきたのは守熊田だった。

緑箋が連絡に出る前に、

朱莉や遼香にも通信が入ってきていた。

これは何かおかしいと感じた緑箋は通話に出た。


「寮長、何かありましたか!」


「緑箋、敵襲だ!

お前が言った通り、うちに敵襲だ。

今、軍にも連絡を取ってる」


通話の後ろでは何か爆発音のような音も聞こえる。


「寮長すぐいきます!

なんとか堪えてください!」


「任せておけ!頼むぞ!」


緑箋は細かいことは聞かずにすぐに連絡を切った。

まずは防衛に集中してもらうのが先決である。

遼香と朱莉にも同じ連絡が来ているようだった。

緑箋は代田を大きな声で呼び出す。


「遼香さん、僕は代田さんとすぐいきますが、

いいですよね?」


「もちろんだ。私も同行する」


朱莉も緑箋もこの件についてはすでに話し合っている。

遼香が白龍寮へ行かないことが予言を回避する作戦として、

誰もが考えることだろうが、

遼香はもし白龍寮で何かあった場合、

自分が出陣するということを決定していた。

そしてそれはすでに軍に共有されている。

もちろん反対意見も多かったが、

遼香は自分が行かないという選択肢がないということをわかっていた。

朱莉と緑箋も同意見であった。

遼香が白龍寮にいるという予言がもし本当であるなら、

遼香は行かなければならない、

なんの理屈も理由もないのだが、

みんなそんな気がしていたのだ。


遼香と緑箋と代田はすぐに転送装置へ向かう。

朱莉は本部で軍と連携をとって状況の把握に努めることになった。

朱莉はきっと遼香の元を離れたくなかっただろうが、

自分のできることをやるということが、

今一番大切だということをよく知っている。


「緑箋君。お願いね」


朱莉はそういうと遼香には何も言わずに本部へと走っていった。

遼香と言葉を交わしてしまったら、

自分の中の何かが壊れてしまうことがわかっていたからだろう。

自分のなすべきことをするために朱莉はグッと自分を押さえつけたのだった。


鳳凰寮から白龍寮への転送はすでに許可されている。

いつ何時でも対応できるように準備は万端だった。

緑箋と遼香と代田はすぐに転送され、

白龍寮の裏手に到着する。

玄関の転送装置が破壊されていることもあるために、

裏手へ回ったのだ。


遼香が緑箋の手をとって白龍寮の屋上へと飛ぶ。

白龍寮の周囲は数百の魔族の軍勢に取り囲まれていた。

しかしその寮の中へ魔族は侵入することができず、

こう着状態になっていたようである。

玄関のところで守熊田の声が聞こえた。

遼香たちは守熊田の方へ向かう。


守熊田は寮のみんなと共に、防衛装置を起動して、

寮を守っていた。


「早かったじゃないか、緑箋。

それに遼香と……」


「代田と申します」


「そうか、代田さん、よう来てくれた。

遼香も……まあ作戦通りやな」


「そういうことだ。

それで状況は?」


「寮内の人間は無事や、

他のところへの攻撃も今のところ聞いてない

どうやら本命はこの寮らしいな」


「じゃあ今のところ犠牲者は……」


緑箋の言葉に守熊田の表情が曇った。

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