第572話 緑箋と諜報活動と

全員緊張感に包まれながら、数日を過ごした。

みんなは基本的に規則正しく生活をし、

規則正しく訓練も行っており、

普段よりも普段らしい生活を行った。

新しく夕乃も一緒に生活をしているので、

夕乃も訓練に加わってくれた。

普段している訓練は夕乃にも新鮮だったようで、

持ち前の明るさもあって、

楽しく訓練に参加してくれた。

そして忍術や諜報活動で有効な魔法なども教えてくれた。

緑箋のスキルにも興味津々だったようで、

緑箋もいろいろなスキルを使って見せたりもした。


「緑箋君のスキルって、

諜報活動に向いてるよね。

遼香ちゃん。

緑箋君も諜報員として活動してもらった方がいいんじゃないですか?」


「それはダメだ」


遼香は一刀両断で断った。


「なんでですか?

真面目だし能力も高いし、

すごくいい諜報員になると思うんですけど」


「確かに消えたり音がしなくなるのは諜報活動では、

大いに効果を発揮するだろう」


「そうでしょう?

なんでダメなんですか?」


「面白くなくなるからだ」


「え?」


「私が面白くなくなるからだよ」


遼香はさも当たり前のようにいう。


「そんな理由なんですか?」


流石に夕乃も驚いている。


「そうだ。

そもそも緑箋君は私が来て欲しいとお願いしてここに来てもらってるんだ。

隊員のように思ってるものも多いようだが、

立場上隊員として席を置いてもらってるが、

本当は客人待遇だよ。

私の部下ではない」


「そうだったんですか?」


緑箋も驚いている。


「そうだよ、初めにちゃんと話しただろう?」


「確かにそんなようなことをおっしゃっていた気もしないでもないですが……」


「だから緑箋君は私の近くにいてもらわなきゃならんのだ。

もちろん私の仕事の手伝いもしてもらっているから、

出張のような形になる任務もあるが、

魔王島に長期潜入してもらうというような

任務をさせられないし、

その間、私の訓練相手がいなくなってしまうじゃないか」


そんな理由もあったのかと緑箋は今更ながら遼香の思いを知った。


「日本の最大戦力がもっと最大戦力になると考えると、

緑箋君と一緒に訓練した方がいいってことですか。

確かにそんなことができるのも一握りしかいませんからね。

それほど実力があって、

しかも要職についてない人間となると、

確かに緑箋君が訓練相手っていうのはうってつけなんですねえ」


「ははは、よくわかってるじゃないか。

そういうことだよ」


「そういうことですね!」


わははははと遼香と夕乃は高らかに笑っている。

伊達に遼香の影になっていないのか、

夕乃と遼香の気は合いまくっているようである。


「それにしても毎日こんなことをしてるんですね。

訓練室といえども、

こんなに毎日魔法を使ってる人なんていないんじゃないですか?

私の修行時代でもこんなに訓練したことなんかなかったですよ」


「これは緑箋君が決めた訓練方法だからね。

緑箋君について言ってるだけだよ」


「そうなんですか!?

緑箋君はずっとこんなことを一人で?」


夕乃は明るくたくさん驚いている。

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