第571話 夕乃の情報

「遼香ちゃんは知ってると思うけど、

今のところ暗殺計画やクーデターなどの情報はないんですよ。

遼香ちゃん身の安全っていうのは、

いつでも考えなきゃいけない問題なんだけど、

本人がこんなのだからね」


「こんなのだっていう言い方はなんだ」


「だって遼香ちゃんと戦おうって思うような人間、

まあ、人間以外でも、

そんなことを考える人がいるとは思えないですから。

百歩譲って考える人はいるかもしれないけど、

実行する人は皆無でしょう?」


「だからこそ、今回のことが本当に起こったら怖いんですよ。

無鉄砲、捨て身でやってくるかもしれないんですからね」


「朱莉ちゃんがいう通りなんです。

突発的に何かが起こるのが一番怖いので、

それを防ぐために私がいるんです!」


夕乃が明るすぎるので忘れてしまうが、

実はとても危険な任務についている。

ときには自分の身を挺して遼香を守る覚悟を持っているのである。


「ということで今のところは遼香さんの危険は予言だけで、

そういう情報は入っていないということなんですよね」


「そうですねえ。

ただ一個だけ私が気になることがあるんですよね」


「ほう、それは興味深いな。

聞かせてほしい」


「遼香ちゃんがそこまでいうなら仕方がありません。

お話ししましょう!」


「じゃあいいかな?」


「ダメです!喋ります!

刺されるっていう話ですけど、

遼香ちゃんが刺されるっていうのが想像できないんですよね。

長距離から狙撃とかいう方がよっぽど現実的なんですけど、

刺されるっていうのは直接刃物で攻撃されるってことじゃないですか?

そんなことありえます?」


夕乃の指摘は正しい。

というかあまりにも正論だったので、

逆にみんなは呆気に取られてしまった。


「確かに、一斉攻撃でもされたならまだわかりますが、

娘に刺されるっていうのも訳がわかりませんよね。

頭に浮かぶのは一人の女の子に刺されてしまうという感じですし」


緑箋も同調する。


「緑箋君も一緒なんだね。

少し嬉しい!」


喜んでいいのかという疑問は残るが、

緑箋も夕乃の指摘から確かにおかしいと感じ始めていた。


「物理的に直接刺されるのであれば、

対処の方はしやすそうだが、

それなのに刺されるとしたら、

何か問題が起こったということなのかもしれないな」


遼香も少し真剣に考えている。


「そうなんですよ。

諜報部でも遼香ちゃんの個人的恨みから、

今回の問題を起こしそうな人を探してみてるんですが、

今のところは手がかりはありません」


「まあそういうことだ。

考えても答えが出ないことを考えても仕方がない。

みんなは自分のことを第一に考えて、

必ず自分の身を守れるように行動してもらいたい。

巻き込む形になってすまないが、

よろしく頼む」


「頼まれました!」


夕乃の明るさが、

今回の予言での暗さを癒してくれていた。

しかし夕乃の底抜けの明るさにも、

やっぱり不安の種は尽きない。

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